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3.2.3.5 斜航および旋回時の船体表面圧力分布と後流計測
(1)実験の目的
船尾フレームラインが大きくる異なるA、Bの2隻の模型船を用いて、斜航及び旋回時の船体表面分布を詳細に計測し、船体に作用する横力の船長方向分布がどのように異なるかを明らかにする。さらに、A.P.位置での横断面内での後流を計測し、とくに従来、計測例のない、旋回中の船尾流場の特徴を明らかにする。また、これらの計測結果は、後述する数値流体力学の手法による船体まわりの流場計算の妥当性の検証にも利用することとした。
(2)実験方法
( 飽砧老彗ャ
A、Bの両模型とも、水面下の船体全体にわたって、約440点の圧力計測孔を、左右両舷対象に配置した。圧力計測には差圧型圧力変換器を用いたが、旋回時の計測結果には旋回に伴い、圧力計測孔から圧力変換器に到るビニール・パイプのなかの水に遠心力が作用するが、これを修正する必要があった。図3.2.3.5.1にB船型船尾部の圧力孔の配置と船内の圧力計測用ビニール・パイプを示した。
(◆妨緡?彗ャ
後流計測には5孔ピトー管を使用したが、ピトー管の位置を変えるトラバース装置は、旋回時の計測を行うために模型船に搭載した。このため、船長方向に計測位置を変えることが極めて困難であり、後流計測は、A.P.を通る横断面内のみとした。図3.2.3.5.2に模型船の船尾部に搭載されたピトー管トラバース装置を示す。A.P.断面内の計測位置は水平方向および鉛直方向とも20mm間隔としたが船体近傍は10mm間隔とし、1状態での計測個所は700〜800点である。
(3)実験結果
( 飽砧老彗ャ
計測結果から、旋回中の船体表面圧力分布のコンターを描いた一例を図3.2.3.5.3に示す。A,B両船は前半部の船型は同一であり、後半部の船型のみ異なる。計測された圧力分布も前半部はほぼ同一であり、後半部に船型の相違が明確に現れていることが判る。図3.2.3.5.4は、圧力計測の結果から、旋回中の船体に加わる横力の船長方向分布を求めたものである。S.S.4以降の船尾での横力分布の相違が明確に示されている。
(◆妨緡?彗ャ
トラバース装置に取り付けられた5孔ピトー管の速度計測値には船体の運動成分を含むので、これを差し引いた結果の一部を図3.2.3.5.5に示す。直進中には左右対象であった伴流域は旋回の結果、旋回の内側(図の右側)に移動し、かつ、プロペラ付近の強い伴流域が縮小していることが判る。また図3.2.3.5.6には図3.2.3.5.5と同一の状態の縦渦の渦度分布を示す。総じて、B船型の縦渦がA船型のそれよりも強いことが明かである。
(4)まとめ
船体表面の圧力計測およびA.P.断面における後流計測の結果、船体後半部のフレーム形状が異なる2船間の横力分布や伴流および渦度分布に明確な相違があり、これらが、本章の前半部で述べられた2船間の操縦性の相違と対応していることが判った。また、圧力計測や後流計測の結果は、後述の数値流体力学的流場計測の検証に使用しうるデータとなりうることが示された。

 

 

 

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