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1 緒言

航行の安全を確保する観点から、船舶の操縦性能の一層の向上が求められてきたが、とくに最近の大型タンカーなどの海難事故等による海洋環境への甚大な影響に対する配慮から、国際海事機関(IMO)では、第18回総会において船舶が満たすべき操縦性基準が決議された。
このように、新造船計画時における操縦性能予測技術の高度化が以前にもまして要求されるようになったにもかかわらず、現状の操縦性能予測技術は、その船型の模型実験を実施して実船の性能を予測するか、もしくは、その船の主要寸法から過去のデータに基づいて推定される流体力微係数を用いて操縦性能を推定するほかなく、フレームライン等の具体的な船体形状を反映できる推定法は確立されていなかった。
このような状況に鑑み、本研究は平成5年度から3ヵ年の計画で開始され、従来の細長体理論による船体流体力推定法の改良を試みるとともに、最近の発展が著しい船体周囲流場の数値解析技術や船体・プロペラ・舵の流体力学的干渉効果の理論的推定法などを、操縦性の分野の研究にも応用して、現状の推定法よりもさらに合理的にフレームラインなどの船体形状を考慮できる操縦流体力の予測法を向上させることとした。
一方、類似の船型に対する流体力微係数のデータから、新造船の流体力微係数を推定し、これを用いて操縦性能を予測する方法の簡便さも捨てがたく、最近の船型に相当する流体力微係数を収集し、これをフレームライン形状の相違を代表する船型パラメータ等で整理することとした。これらにより、新造船の計画段階から操縦性能の面で安全性の高い船舶が設計できる技術を開発し、わが国の造船業の発展に資することを本研究の目的とする。

 

 

 

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