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SR221操縦運動時の船体周囲流場に関する研究(要約)

研究の背景と現状評価
船舶の安全性の観点から、基本計画時における操縦性能の推定精度向上が緊急の課題となっている。とりわけVLCCなどの大型タンカーは、ともすればその貧弱な操縦性能が図1に示されるような地球的な規模の環境破壊に結びつくので、設計の初期における操縦性能の検討が十分に実施されなければならない。国際海事機関(IMO)では、このような観点から第18回総会において船舶が満たすべき操縦性基準が決議された。

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従来からの操縦性能推定は、模型試験による方法とシミュレーション計算による方法に大別される。模型試験による方法は直接的で精度的にも実用レベルに達していると言えるが、船体形状が確定していない基本計画段階で実施することは不可能であり、後に確認はできても船型設計に生かす時間的余裕が無いのが欠点である。一方、シミュレーション計算による場合は、何らかの方法で船に作用する流体力を推定し入力する必要があり、実質的な操縦運動の推定精度はこの流体力すなわち流体力微係数に関するデータベースの量と精度にリンクしていると言っても過言ではない。
そこで、新しく設計する船の操縦性能を推定する際の最大の問題は、データベースに無いその船の微係数を如何に精度良く求めるかと言った点に帰着する。残年ながら、現時点ではまだ船の詳細形状を考慮した操縦性能推定技術が十分に確立できていない。すなわち、現状では、船の長さ、幅、深さなどの船体主要目から微係数を推定するしか無く、例えばフレームラインなどを考慮した高精度な操縦性能推定技術はまだまだ不十分な状況にある。これは、本研究がスタートした平成5年度に実施した現状調査のための実験結果と推定計算の比較(図2)からも明らかである。

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