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7. 実船の塗装劣化・腐食疲労の調査および評価

 

7.1 就航船の調査事例
7.1.1 塗装劣化状態の予測
老朽船の重大事故が相次いだことに鑑み1993年より船級協会では検査強化規則を発効した。
その規則の一部に「塗装劣化状態の予測」がある。それは、lACSによりGood,FairおよびPoorに分類され、状態に応じて次の点検までに事故が起きないように適切な処置を行うように配慮されている。日本においてはIACSに従うことは勿論であるが、NKの技術研究所ではcA〜cEのより詳細な5段階に分類し予測の精度を向上するように配慮した。また、20隻以上の船について塗装劣化の実態を調査した。本SRにおいても劣化に関し特色のある船について調査した。調査結果は図7.1に集約することができる。点で表わした領域は各船の環境や塗装仕様による偏差の範囲である。PoorもしくはcD/cE以下は自由に腐食が進行する範囲であり、放置する場合それ以後より密な検査が要求される。cA/cBは大部分の領域で塗装の効果が完全である領域である。

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図7.1 WBT内防食状態の標準的経年変化〔Ballast Time Ratio 50%, Tar Epoxy 1 Coat〕

 

7.1.2 腐食疲労き裂事例
実船の腐食疲労損傷に関する統計量については、1.1(2)に概説されており、損傷の事例は平成7年度の総合報告書に多くの事例が紹介されている。詳細はこれらを参照することにして1.1(2)で述べた各期の腐食疲労の予測を念頭にした特色を述べる。
第1期:(標準的に建造後8年まで)は図7.1よりも判るように、塗装状態はcCまでであり、損傷事例も詳細構造の良くないことに起因したものが多く、き裂の発生に関して腐食の影響は少ないと推定される。
第2期:(建造後12〜13年まで)の塗装状態はcC/cDであり、局部的腐食を散見し、疲労き裂の発生しやすい溶接都は比較的腐食が多い。き裂の発生は自由腐食ほどではないが、なにがしか腐食の影響を受けていると推定される。
第3期:(建造後13年以上)は特に防食に配慮した場合でなければcD/cEであり、自由腐食が進行する。き裂損傷も腐食衰耗と混在している場合がほとんどである。
VLCCのSide Longitudinalの損傷もこの時期では第1期と比較しWBTでの比率が増える。き裂は無垢材の腐食疲労試験と同等な腐食影響を受けていると推定できる。

 

7.2 就航船のき裂発生箇所の応力状態
第2世代のVLCCに就航後1〜3年で荷油タンクの縦通肋骨に疲労き裂が多数発見された。この損傷およびほぼ同じ応力レベルにある非損傷をデータよりSN線図が描ける。
同船でのバラストタンクの損傷は少なかったがこれは平均応力の影響と考えられる。
第1世代のVLCCでも就航14年程度で同種類の損傷を経験しているが、この場合はバラストタンクにも比較的疲労損傷が多い。これは老齢船での塗装の劣化による腐食疲労と考えられる。
バラストタンク(WBT)の平均応力を荷油タンク(COT)と同等になるように修正を施し、COTのSN線図(損傷時の超過確率10-8のホットスポット応力範囲)の平均および標準偏差の2倍の図にWBTのデータを記入すると図7.2となる。高繰返しでの強度の低下は高齢時の腐食疲労の影響と考えられる。

 

 

 

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