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緒言

 

船舶のバラストタンクは最も厳しい腐食環境下にある。満載航海時には空となり、バラスト航海時には海水が満載されるという状態が繰り返されるために船体構造の腐食は顕著であり、さらに波浪変動荷重と船体運動に伴うタンク内海水の変動内圧によって激しい繰り返し荷重が加わるために船体構造に疲労損傷が発生する可能性が大きい。
船体構造の腐食対策として船級規則により、有効な塗装を施すことが決められているが、塗装状況、温度・湿度等の環境状態、船体構造の応力分布等よって、数年後には塗装の劣化、塗膜の破壊、船体構造のサビ、き裂の発生等が生じて来る。
このような損傷例が実船では非常に多いのにも拘らず、実構造、実環境における腐食疲労特性はまだ十分に把握されていないのが実情である。特に最近よく使用される高張力鋼についての研究も非常に少ない。
腐食環境や変動荷重条件の特に厳しいバラストタンク構造の信頼性向上のために、実船おける腐食疲労特性を考慮した高精度の寿命予測技術の確立が必要である。
当部会では平成5年度から平成7年度までの3年間に、過去の実績調査、KA32鋼(315N/m?級TMCP鋼)を使用した小型試験片及び中型試験片による腐食疲労試験と解析による各種要因の解明、実船調査等を実施し、これらの成果の総合的な検討結果を基にして、バラストタンクの腐食疲労強度について合理的な評価法の提案を行うことを目的として研究を実施して来た。
小型試験片を用いた疲労試験の結果から種々の要因をパラメトリックに表示出来る手法を確立し、中型試験片を用いた疲労試験でこれを確認した上で合理的な海水腐食疲労寿命予測法を確立しようとするものである。
更に腐食疲労データの調査、環境模擬試験法の検討、実船調査等を実施して側面からこれを確認、補強することを意図している。
本研究の結果として下記が期待される。
(1)腐食疲労の寿命予測法の精度向上が図れる。
(2)実船の検査保守技術の方向付けが可能となる。
(3)実船バラストタンクの信頼性向上及び長寿命化が実現する。

 

 

 

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