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7.RPG荷重による寿命評価

 

7.1塑性挙動を考慮した疲労き裂伝播則
疲労き裂は、き裂自身の応力/ひずみ集中により伸ばされたき裂前方の材の中を進展するために、繰返し荷重下では複雑な挙動を呈する。すなわち
〈負荷過程〉では、
?最小荷重で生じたき裂閉口域が負荷に伴い、徐々に小さくなり、完全に開口するまでの荷重区間
?き裂が開口してから、き裂先端に再引張塑性域が生じ出すまでの荷重区間
?き裂先端に再引張塑性域が生じてから、き裂の鈍化とともに引張塑性域が成長して、最大荷重にいたる荷重区間
〈除荷過程〉では、
?最大荷重から、除荷弾性域がき裂先端近傍に生じ、き裂先端に再圧縮塑性域が生じ出すまでの荷重区間
?き裂先端に圧縮塑性域が生じてから、圧縮塑性域が成長しき裂の鋭化が起こり、き裂が閉口しだすまでの荷重区間
?圧縮塑性域の成長とともに、き裂閉口域が成長して最小荷重にいたる荷重区間
が、通常生じる。疲労き裂の進展は、き裂先端近傍で生じる塑性仕事の蓄積により引き起こされると考えられる。塑性仕事がなされる荷重区間は、上記のうち、?、?および?である。除荷過程では、圧縮の塑性域の成長は?と?の過程で生じ、荷重の増分は塑性域の成長だけに寄与しているわけでなく、き裂閉口域の成長にも寄与している。しかし負荷過程では、?の区間のみが引張塑性域の成長だけに寄与している。したがって、塑性域の成長のみに寄与する荷重範囲は?の区間に対応する。上記の観点から負荷過程で生じる再引張荷重発生荷重RPG荷重から、最大荷重にいたる荷重範囲?に対応する応力拡大係数範囲ΔKRPが、疲労き裂伝播速度da/dNを律するパラメータであると提案されている 1)。そして、図7.1に示すように、種々の荷重パターン付与した試験結果より、ΔKRP〜da/dN関係は両対数グラフ上で、極低伝播速度領域までを含めて直線関係にあることが明らかにされた 2)。またき裂停留条件はΔKRP≦Oで与えられることが、実験より明らかにされた 3)。

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図7.1 da/dNとΔKRPの関係

 

 

 

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