3.船体構造における疲労き裂の特徴
船体構造部材に発生、伝播するき裂の挙動は実験室で行われる基礎試験片の疲労試験で得られるき裂の挙動に比べ様々な特徴がある。これらの特徴と共に、これまでの知見による船体構造のき裂伝播挙動の説明の限界を明らかにし、本研究部会で得られた成果でいかに改善されたかを概観する。
3.1船体構造部材に作用する荷重
言うまでもなく航行中の船体に作用する荷重は大きさの同じ荷重が繰り返し負荷されるのではなく、大きさの異なる荷重が加わる変動荷重である。船の生涯にわたり作用している変動荷重の統計的特性はワイブル分布で表すことができ、その刑犬係数hは1(指数分布)とされている。しかし、船種、航路、運航状態により個々の部材ごとに、この値は異なるであろうが現時点では未だ明らかでない。
航行中に作用している変動荷重の特徴は、1)満載航海/バラスト航海の二つの航行状態が交互に繰り返されること、2)大きな波浪に散発的に遭遇する(図3.1(a)参照)のではなく、荒れた海象に遭遇したときにまとまって大きな波浪荷重(嵐モデル、図3.1(b)、(c)参照)を受けることである。き裂伝播の面からは1)は平均応力の影響、2)は荷重履歴の影響で、共に繰り返し荷重の遭遇順序に係わるものであり、き裂伝播寿命に密接に関係している。
図3.1(a)ランダム波浪荷重の模式図
図3.1(b)嵐モデルによる波浪荷重
図3.1(c)嵐モデルによる波浪荷重
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