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2. 本SRの研究実施内容

2.1船体構造における伝播解析手法の実験データ整備のために
2.1.1パリス則とその適用限界
疲労き裂伝播解析の基本式はパリス則と称される。ParisとErdoganによって提案され(2−1)式で表される。

 

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da/dN:応力繰返し一サイクル当たりのき裂進展長さ
△K:応力拡大係数範囲(作用応力、き裂寸法a、周辺の形状条件から定まる力学パラメータ)
C,m:伝播定数(材料特性値)
疲労き裂伝播寿命は、(2−1)式を変形することによって計算できる。左辺のN(ao→af)は、き裂サイズがaOからaf

 

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に達するまでの伝播寿命を意味する。
パリス則の適用上の限界は、常にき裂先端は口が開いているとの前提をおいている点にある。このために与えられた荷重条件。形状条件の下で、例えば口閉じが起こる場合には、速めのき裂伝播速度すなわち短かめの寿命推定を与えることとなる(き裂先端開閉口効果の詳細は、7章を参照)。
また、(2−2)式右辺の積分下限aoは、就航中に発見されたき裂寸法・製造時検査での検出限界に相当するき裂サイズ・疲労強度SN線図から逆算される仮想初期き裂サイズ、などとして与えられる。
船体構造における疲労き裂伝播を解析する上で留意すべき点として、構造的なものとしては、構造の冗長性・溶接に伴う残留応力の影響や溶接余盛り形状による局所的応力集中の存在、などが指摘できる。
また、船体部材に作用する荷重の特色としては、変動荷重であること・平均応力(荷重)としてFullloadとballast状態が交互に繰返されること・時々に荒れた海象に遭遇すること、などが指摘できる。これら船体構造の特徴に関しては、次の3章で詳しく述べる。
2.1.2小型試験片によるき裂伝播試験
特徴的な荷重履歴を単純化して試験片に与え、得られた疲労き裂成長を基軸データとして採取した。最近の高張力鋼の使用実績を考えて、本部会の共通供試材として船体用降伏点32キロ級高張力鋼(KA32)を用いている。
共通供試材を用いて小型試験片(中央切欠き引張り試験片など)による疲労き裂伝播試験を行ない、入力荷重に伴って生ずるき裂進展の加速/減速を詳細に測定した。
共通供試材の基礎データとして、得られた伝播特性値を図2−1に示した。
き裂伝播試験として、過大荷重のシリーズ伝播試験(図2−2参照)・平均応力をステップ変化させたシリーズ伝播試験・嵐モデルのシリーズ伝播試験・(模擬)残留応力場シリーズ伝播試験などを実施した。これらシリーズき裂伝播試験により、パリス則の適用限界を明らかにしたり、き裂先端開閉口

 

 

 

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