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6. 成果の活用

船橋では操船者は目視による情報、機器・計器に表示された情報、書類情報等から必要な情報を抽出、収集して、これらの情報を解析・評価し、行動意志を決定して実行するというサイクルを繰り返している。
操船者が労力をかけて実施している上記業務の一部を自動運航システムが効率的に代行しても、操船者とシステムの対話が円滑を欠けば、操船者の負担は低減せず、逆に精神的ストレスが増大する結果となるから、人間と機械がスムーズかつ的確にコミュニケーションできるいわゆる人に優しいマン・マシンインターフェイスの開発が「見逃し」や「誤認」などのヒューマンエラーを防ぐ決め手となる。今回の実験で得られた注目すべき成果を振り返り、今後の活用の方法を考えてみよう。
1)マン・マシンインターフェイスの要件と機能
マン・マシンインターフェイスの要件として次の機能が要求される。
a. システムを容易に理解できること
b. システムから容易かつ円滑に情報が入手できること
c. 必要な操作が容易かつ円滑にできること
このような要件を持つ機能として、今後の運航システムではマン・マシンインターフェイスとして情報提供機能と操作機能の二つの機能に大別される。
船橋における情報提供機能は電子海図と航海情報が主たるものであって、これらは視覚情報として操船者に提供されるが、一方音声情報も有効であることが今回の実験で立証された。これらの情報をべースとして操船判断が行われ、決定された判断は行動として制御機器に伝達されるが、それが正しく伝えられているかどうかは必ずアンサーバック、フィードバックの手段により操船者の確認を得なければならない。
特に機器の信頼性は操船者にとっては重要な問題であり、例えば電子海図の故障、あるいは電子海図は健全であっても、そこに自船位置を示すGPS信号の喪失等は著しく信頼性を損なうものであるから、これらのシステムには必ず有効なるバックアップシステムを装備する必要があろう。
2)電子海図
これからの航海システムの中で電子海図は中心的位置を占めることになると考えられる。電子海図の性能基準はIM0及びIEC(Intemational Electro−Techinical Commission)で検討され、機器そのものの性能基準は既に決定され、国際的に利用されている状況であるが、バックアップシステムと海図のアップデイトの問題だけがいまだ合意に至らず取り残されている。
海図というものは、航路計画、航海、座礁予防、自船位置決定、海象の概要取得など様々な機能を持つが、電子海図は紙海図の機能に加えてレーダ/ARPA機能を持つことができるし、またウィンドウにより航海情報表示機能を持たせることも可能であることから、今後の自動運航システムは電子海図中心に発展するだろうと予想されるところである。その点で今回の研究の結果が今後の自動運航システムのあり方に大いに参考となるところである。
3)トランスポンダ
本研究でもトランスポンダば有効であると好評を得たが、トランスポンダは国際的にも早くから注目されているシステムで多くの研究結果が発表されている。特に最近VTS(Vessel Traffic Service)との関連でその必要性が見直され、ship to shoreのみならずship to shipの通信にも必須のシステムであるとしてIMOで検討中である。そのシステムの一つはレーダで情報を必要とする他船を捕捉するとGMDSSのVHF−DSC(digital Selective Calling)によって必要情報を送り返すものである。もう一つの方式は、GPS時間と連動させて、自船の位置や必要情報をVHFで放送するブロードキャスト方式である。現時点では後者の方が優勢な状況にあると思われるが、何れにしても近い将来どちらかの方式が船舶に搭載されることになろう。

 

 

 

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