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こで、実験結果の信頼性を高めるために、操縦運動を精度良く表現する数学モデルを船体運動計算部に取り入れた。
(5)航路、自然、交通条件の設定
?航路条件としては、航行海域の余裕度に差を設けるため沿岸域と狭水域を設定した。ここでは地形的制約等によりその進路から離れることが著しく困難である海域を狭水域とし、比較的容易な海域を沿岸域とする。以下の3海域を設定した。
a)沿岸域………東京湾入口付近
b)狭水域………瀬戸内海備讃瀬戸東航路付近
c)沿岸域→狭水域……備讃瀬戸東航路東側入口付近
?自然環境条件としては、明るさ、視程、潮流外乱に差を設けるため、以下のとおり設定した。
a)明るさ………昼間と夜間
b)視程………晴と霧
c)潮流外乱………潮流有と無
?交通条件としては、遭遇船舶数に差を設けるため高密度と低密度を設定した。輻輳する船舶は航行船のみならず、漁船などの航行を制限する船舶も含まれる。避航対象船の発生隻数は以下のとおりである。
a)低密度海域…………1隻
b)高密度海域…………2隻

 

5.6 総合シミュレーション

5.6.1 自動運航システムと評価項目
一般に、人間の意志決定と行動に至るプロセスは以下のとおりであると言われている。
?情報の収集
?情報の解析
?行動の決定
?行動の実現
このプロセスのうち、特に人間の「行動の決定」のメカニズムが解明されていないため、システムにおけるオペレーションの自動化が難しい。このため、多くのシステムでは最終判断の過程を人間に任せているのが現状である。
従って、そこにヒューマンエラーが発生する余地があると言われているが、いわゆるヒューマンエラーは通常の状態では起こり得ず、複数の異常事態によってオペレータが防御的な立場に追い込まれた結果であるとする説や、人格が関連しているとする説などがある。一方、近年開発されるシステムは人間の肉体的・生理的負担の低減から、知的負担の低減を目的としたものに変化しつつある。巨大なマン・マシンシステムでは、自動化によって新たなエラーが生じることが問題視されており、ヒューマンインターフェイスの重要性が指摘されている。
今日の船舶は大きなマン・マシンシステムとなっており、この中での自動運航システムには、無人化よりも人間が能力を有効に発揮できる環境を作る、いわゆる航海支援装置としての機能が求められている。
本研究では航海支援装置の観点から、その評価項目を以下のとおり定めた。
?有効性:操船者の負担、安全性・効率性
?機能:異なる環境下における性能・機能
?操作性:情報取得の容易さ、操作の確実性、バックアップ機能
5.6.2 評価指標の設定
人間が介在するシステムの評価には、主観的評価、客観的評価、及び生理的評価が用いられる。

 

 

 

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