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の状況(視界、海象、船舶の輻輳状態等)による総合的判断のより身近なツールとして、より深く習熟しておく必要があり、それが安全運航をキープすることにもつながることになる。

5.2 航海情報機器の現状と自動運航システム

船内で得られる情報を統合し、これを操船者に有効に提供するために自動運航システムの構築を計った。具体的には、現状の航海情報機器の問題点を分析し、船内外の情報を分析整理し、最適な情報の提供要領を決定した。この結果、船内の情報を対象とする場合は、技術的にはかなりの要求に対応し実現することが可能となっている。
一方、平成7年度に行った現場の操船者を対象としたアンケート調査においては、次のようなユーザの意見が印象的である。
ア. むやみに多機能化にはしることで操作の繁雑さを招くことを危倶する。
イ. マンマシンの連携が悪いと人による確認がおろそかになったり操船の邪魔になる。
ウ. GPSの測位精度の評価は高いが、ARPAの性能に対する信頼感は低い。
多機能化による操作の繁雑さは、家電製品が具体的な例として上げられていたが、航海計器のなかでもGPSのように広い分野を対象として基本モジュールを開発する製品の場合には、色々な機能を可能な限り一体化することで合理化を図ろうとする。従ってこの場合は、単体として利用する場合には、非常に多くの機能が組み込まれているので、かなり繁雑な操作を理解する必要が出てくる場合がある。
しかし、この研究で行ったように、単体としてではなく、自動運航システムのなかでそこから必要な情報のみを取り出し、処理し、提供することで、このような問題を吸収することができる。
マンマシンの良好な連携に関するユーザの意見としては、必要な情報をもっと絞りこんだり、優先度や割込み処理を工夫したり、提供手段をもっと工夫する余地があろう、などの声があろうかと思うが、これらは操船のノウハウとメーカの技術を突き合わせ、積み上げていくことで、より良いものになっていくと考えられる。
アンケートで示されたARPA性能に対する信頼性の問題については、大きな課題であろうと判断するので、統合情報表示システムの今後の可能性の一つとしてここで検討を加えておく。
当研究では特に触れなかったが、この情報は、船外からの情報として位置付けて。船内情報とは異なるものとして考察すべきであろうと思う。
ARPAはレーダの物標情報を処理することで、他船の位置や動向、自船との相対関係などの情報を提供するものである。
従って、陸や豪雨などの電波伝搬上の障害の影響を受けたり、レーダ自体の誤差に併せて物標を量子化する段階での誤差、相対関係を演算する場合の方位や船遠センサーの誤差が加わる。
さらに動向情報は、過去の複数の位置をプロットし、演算する方法をとっているので、その即時性には問題があるとされている。
また、物標の識別はARPAの情報から得ることはできない。
ARPAの持つ課題に対するアプローチとしては、レーダや方位、船速の精度を上げていく方向と、ARPAの持つ誤差や不確実性を別の手段で補完する方向の2つがあると考える。
ここでは、後者の補完の可能性について検討する。
補完方法の一つとして、船相互間の情報交換手段として、この研究で行ったトランスポンダを用いて通信手段によ

 

 

 

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