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自動運航システムの評価

1. まえがき

近年、GPS、電子海図などの電子技術が発達し、航海に画期的な進歩をもたらした。しかし、このような進歩にもかかわらず、統計によれば日本における年間の海難の数は依然として毎年約10,000件弱程度の平行線を維持し続け、画期的な新技術がこと海難に関しては良き成果を挙げていないように思われる。海難の中では、衝突、乗り揚げなど、いわゆる交通事故的海難の占める割合が極めて高く、全海難の過半数にも達している。このような交通事故的海難は自動車の交通事故と同様に、その殆どがヒューマンエラーによるものであると言われている。
このように、いかに技術が発達し、高度の装置が装備されても、それを取り扱う人間の過失。取り扱い不適切など、いわゆるヒューマンエラーを減少させなければ事故は減らず、一旦タンカーなどの大事故が発生すれば、社会的に大きな損害を与えるばかりでなく、掛け替えのない我々の地球を汚染し、環境を破壊する事にもなりかねない。ヒューマンファクターの研究は地味なものではあるが、ハイテク自動化時代の現在に至って再認識しなければならない極めて重要な意味を持つようになってきた。
このような観点から、本委員会ではヒューマンエラーを減少させるような、ヒューマンフレンドリーな運航システムの構築を目指して研究を行ってきた。本研究は3年度に亘り行われ、図1に研究の概要を示すように、先ず海難発生の状況や原因調査など基本的な事項から始め、最終的にはヒューマンエラーを減少させることができるような運航システムを想定したIBSをシミュレーターに接続し、これによって現役の船長、航海士などによるシミュレーション航海を実施した。そしてこの航海の総合評価からこのシステムの評価を行い、上記目的を達成することとした。

 

 

 

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