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(2)疲労強度への影響
溶接残留応力の疲労強度に及ぼす影響を各種溶接継手について明らかにした。
1)横隅肉溶接継手:疲労強度に及ぼす板厚影響
2)角回し溶接継手:応力集中部の応力比の影響
3)部材交差部の疲労強度への影響
4)疲労き裂発生寿命に及ぼす残留応力の影響の評価法の提案
(3)き裂伝播寿命への影響
疲労被害を受ける領域寸法がき裂伝播速度を支配し、両者の関係は両対数グラフ上で直線関係にある。というき裂伝播則を基礎とした解法で残留応力分布下でのき裂開口シミュレーションを行い、その影響を明らかにした。
(4)残留応力低減法
余熱、溶接順序、加熱方法、溶接方法による残留応力低減法を述べその有用性を明らかにした。

4.8 結論

平成6年から3年にわたって行ってきた「残留応力の計測法・推定法に関する研究」の目的は残留応力の実態把握に重点をおいて、その実用的な計測法と推定法に関する研究を行い、溶接構造物の強度推定精度の向上を図ることであった。
この研究を解析法を計測法の2つに分けて研究を行い、下記の成果が得られた。
(1)実船の残留応力の実用的計測法
計測法に関しては、主としてX線計測法、磁気歪計測法および応力弛緩法を用いて小型および大型模型での計測を実施してその精度確認を行い、実船でのこれらの計測法の適用性を開発した。そして現状および改良型の機器を用いて実船の残留応力を計測し、船体構造の残留応力の実態を把握できた。
(2)実船の残留応力の解析法
解析法に関してはまず文献調査を行って最近の研究の動静を調べた。
次に非弾性解析コードのベンチマークテストによる精度確認と小型模型での非弾性解析を行い、それらの結果及び実測データを固有歪/応力に基づく各種弾性解析と比較検討することにより、計測データを一部参照にして簡易的に溶接残留応力が推定出来るようにした。
さらに固有応力と固有ひずみに基づく応力推定法を開発して、実船での残留応力の検証を行った。
(3)実測法と解析法を融合した船体残留応力の推定法
解析法と計測法で得られた成果を基にして、実船残留応力の推定システムの提案を行って船体構造設計において算出できる形にまとめた。
(4)残留応力の強度に及ぼす影響と残留応力低減法
さらに構造強度に及ぼす影響を座屈、疲労、き裂伝播の分野で検討し、残留応力低滅法と合わせて構造強度設計の参考に供した。
この研究により溶接残留応力の実態が明らかになったので、この研究成果を活用して設計の精度向上に役立てられる事を望むものである。
今後の課題として下記のものがある。
1)就航後の残留応力の変化は大きな課題であるが、これは今後残留応力の構造強度に及ぼす影響の研究
を行う上で、合わせて行うべきであろう。
2)船体にかかる外力や船体構造の強度評価については第228研究部会「波浪中の船体構造の安全性評価

 

 

 

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