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1. 研究の目的

船体構造は切断、曲げ、溶接、歪取りなど種々の加工が施された鋼板により構成されている。これらは製鋼時の圧延を含め、建造のための加工工程の殆どが熱加工あるいは塑性加工であり、加工の結果何らかの残留応力が鋼材に付加される。従って、出来上がった船体構造には様々な原因で生じた残留応力が互いに重なり合い複雑に分布している。
これらの溶接残留応力が船体強度、すなわち疲労強度、座屈強度、脆性強度に及ぼす影響は無視出来ない事は良く知られた事実である。特に最近では、変動応力下での溶接構造物の健全性を精度良く推定するためには、残留応力を含めた溶接部の応力変動の把握が不可欠で有るという事が認識されてきている。
現在作用外力の推定精度向上に関する研究は盛んに行われているが、(第228研究部会、第233研究部会等)、残留応力の実態に関しては十分に把握されていない。また、現在の計測方法では実構造物の残留応力を計測する事は難しく、計測例は殆ど無い状態である。
このような状態に有ることを認識した上で、本研究部会は溶接構造物の残留応力の実態把握に重点をおいて、その実用的な計測方法と解析法に関する研究を行い、溶接構造物の強度推定精度の向上を図る事を目的とする。

 

 

 

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