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5. 研究成果の総括

3カ年間の本研究を通じて実施した各種の計測内容及び計測結果から、今後のディーゼル船機関部の計画、設計に際して活用出来る内容を次のようにまとめた。
(1)計測法案の統一、標準化
IMOでの大気汚染物質の排気規制の動きもあり、今回と同様の一般諸元を含めての排気ガス性状を計測することが増えてゆくと思われる。今回の算出方法を含む計測方案及び報告要領は、機関メーカ・造船所・船舶運航者の相互で用いることの出来る内容であるが、JIS等で定められた標準ではない。今後、国内で広く統一して用いるため、標準化・基準化を強く望みたい。機関メーカ、造船所、船舶運航者の相互にまたがる計測を必要とする際には、今回の算出方法を含む試験方案と報告要領は、統一して用いることが出来るものである。
(2)計測法、補正法について
今回の研究を行うに際して、統一した試験方案の作成とその内容の検証がひとつの重要な課題であった。このため、この方案は本研究のみならず将来の各種規制や陸上と海上の間での比較試験等々への活用や、我が国以外との比較等にも活用できることを念頭に、ISOの基準をべ一スに作成した。加えて、陸上試験、海上試験と通じて「測定位置の違いの影響はないこと」や「測定計器の違いによる影響の程度」、「風景計算法の検証」、「湿度補正の考え方」などの不明点をひとつひとつ明らかにした。
排気ガス風量計測については、排気ガス性状分析から容易に算出が可能な「カーボンバランス法」及び「酸素バランス法」が測定器具を用いての方法と差がないことが明らかとなった。
湿度補正については、本研究の成果として「湿度補正には、吸込空気の絶対湿度値もしくは計測又は推定で求めた掃気室内の絶対湿度値の何れか低い方の値を用いる」ことを提案したい。これまでは、陸上又は実験場での計測のためかあまり問題とされていなかったが、海上の厳しい環境では湿度補正の影響が大きいことから、この点が判明した意義は大きいと考える。
(3)NOx濃度計について
排出NOx濃度計測用の測定計器については、今後、船上での使用が増えると思われるポータブルタイプの化学発光法(CLD)と定電位電解法(ECC)の2機種についての比較を行い、平均で4%程度の差を示すことを明らかにした。この違いが生じる理由は、おのおの計測原理が異なることから生じるものでそれぞれの計器メーカ内で改良がすすめられている。船舶における無人自動測定及び常時モニタリングが主目的であれば、現在陸上プラント等で使用されている定置汎用型の使用も考えられるが全ての船舶に搭載する事を考えると相応しいとは思えない。
今回使用した計器は、常時モニター性や精度を有る程度犠牲にして、且つ船舶のタラップを人間の手で持ち込み計測が可能な携帯性を備えている。また、ISOでも5%以内は等価性を認めており、今後ともに使用については問題無いと判断した。
しかし、この排出NOx濃度と酸素濃度の計測の大きな課題として、これらの計測装置は基本的には分析計であり、扱う者によっては測定誤差が出やすい。そのため、頻繁に基準ガスとの較正が必要であること、取り扱いには有る程度習熟が必要であることを挙げておきたい。
(4)陸上と海上との相違について陸上と海上の違いであるが、排出NOx濃度及び燃料消費率には明らかに違いを示すことが確認された。

 

 

 

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