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7. 詳細設計の注意

7.1 一般

アルミニウム合金材は強度に比べてヤング率が低く、変形しやすい材料であり、また、応力集中を起こしやすい性質がある。我々は船体構造の常識を鋼構造によって体得したものが多いが、その鋼構造によって得られた構造のバランス感覚が、アルミニウム合金構造では通用しない場合がかなりある。アルミニウム合金構造で最も危険な個所は、いわゆるハードスポットであるが、板の拘束力が弱く(板が変形しやすい)、スチフナが横倒れを起こしやすいなど、板と骨とのバランスの問題も重要である。

アルミニウム合金の溶接はイナートガスアーク溶接によるため、溶接卜一チは鋼の溶接棒に比べてかなり大型になる。そのため溶接作業がスペースの制約を受け、構造設計にも制約がうまれる。例えば、鋼パネルの防撓構造のスチフナとして広く用いるインバートアングルは、小型の等辺山形の板付け溶接の場合は、フランジが邪魔になって片面しか溶接できない。そこで、バルブプレートを使う。バルブプレートが入手できなければ不等辺山形のフリーフランジの幅を切り落として使う。
溶接構造の設計に当たっては、組立順序を考えておかないと、工作不能の個所ができる。インバートアングル縦肋骨の肋板貫通部、縦桁の隔壁貫通部などを全周溶接するためには、外板を取付けないうちに溶接を完了しないとフリーフランジ下面、面材の下面等の溶接ができないなどがその例である。
7.2 ハードスポット

板に構造部材を取付けたとき、部材端末の形状によって応力が集中し、繰返し応力によってクラックが発生しやすい個所をハードスポットと言う。鋼構造の場合は、いわゆる、ソフトトー(部材先端のテーパーを緩やかにすることによって剛性の急変を和げる)によって損傷を防ぐことが可能であるが、アルミニウム合金の場合、特に振動のある場合はテーパーでは不十分と考えなければならない。ハードスポットに発生したクラックは振動によって急速に成長する。

深いガーダーの倒れ止めブラケットは必ず隣の骨材まで延さなければならない。縦横の桁板は適当な間隔で交差させ、互いに支持する構造とする。肋板を支持する縦桁の心距が大きく、途中に倒れ止めを設けるときは、縦肋骨の位置又はパネルブレーカーを設けてその位置に取付ける。
局部的なパネルブレーカーの止端をスニップエンドとすると、その先端がハードスポットとなる。桁板に溶接すると桁板を隔てた外板にクラックができることがある。このようなパネルブレーカーはブラケット固着とすると安全である。
振動源となる装置の支持構造の局部防撓材やブラケット、主機台、補機台、舵軸管支持、シャフトブラケット支持等の端末は十分に延長するか、局部防撓材より剛な桁に固着する。

 

 

 

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