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6. 漁船構造

6.1 基本的な考え方

「アルミニウム合金製漁船構造基準(案)」による漁船構造設計について述べる。

この基準(案)の原案は漁船協会の委託によって(社)軽金属溶接構造協会が作成し、(社)漁船協会によって構造寸法の算式を数表化する等の作業が行われたものである。
漁船には、官庁船やプレジャーボートとは違う漁船独特の取扱いがあり、特に漁港において他の漁船と共に碇泊しているとき、他船と接触するなどの条件に耐えるだけの強度を持たなくてはならない。
また、現在の我が国の漁船建造の実態から、その使用条件を絞って厳密な設計を行うことは困難であり、使用条件が多少変化しても差支ないよう計画しなければならない。
一方、高価なアルミニウム合金製船体を採用する以上、その最も大きな利点である軽量の特性を十分に発揮し、また、無駄な材料・工数を消費しないようにしなければならない。
構造基準はこのような条件を満たすために、船の長さに対する標準的な寸法比、排水量を想定し、漁船としての取扱いに耐える基本的な構造強度に加えて、普通に出会う荒天においても、必要に応じ速力を減じ、針路を変えるなど、普通の操船をしたときのスラミングに耐え得るように規定する。
操業の条件によっては、荒天時においても乗員の耐え得る限界まで速力を落とさず航行することを要求される場合もあるし(高価なアルミニウム合金製漁船には要求されて当然)、また、船によっては標準的長さ排水量比に対し50%前後も重い状態で運航する船もある。このような船に対しては、それぞれの条件に応じた強度が要求される。
しかし、このような操業条件は特殊な漁業種類の船が、特殊な機会に出会う条件であるので、このような条件で損傷のないだけの構造を全般に要求することは適当でないし、設計条件を細かく規定するのは漁船基準としてなじまない。そこで、ここは規定ではなく、勧告の形で標準を与えることが適当と考えられる。
一般に同じ船体・装備に同じ出力の機関を使用したとき、排水量が軽く、速力が高いときは、大きな衝撃を受けやすいことは明らかであるが、船底衝撃を受けて運航すれば、速力は出なくても排水量が大きい状態の方が船底衝撃水圧・船体縦曲げモーメントは大きくなるものであることに注意しなければならない。

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