日本財団 図書館


 

なく、deepV船型は航走安定は優れているが、滑走面に適当なねじれのあるものが特に優秀であることが分かる。
ポーポイジングは模型試験との相似性は厳密には成立しない。これはレイノルズ数が一致しないこと、空力特性の問題を無視できないのではないか等の理由によるが、ポーポイジング、延いては航走安定の問題と船型・状態との関連性に関する概念を得るためには極めて有用な資料となろう。

110-1.gif

図4.4

4.1.3設計外力
船舶の設計に当たり、いかなる波浪外力を考えねばならないかは、当然その船舶の使用条件によって定まる。その船の使用される海域によって、予想される波浪条件が決まり、その船の要求速力、気象条件の限界が決まる。経済的条件との関連のうえで船の大きさが決まり、最適と思われる船型が選ばれる。使用海域に発生し得る最大の暴風浪にも耐え得て、所要の速力を発揮できる船が経済的に成立しないものとすれば、その船の受ける最大の波浪外力は、その船に乗っている人間の生理的、心理的に耐え得る衝撃の限界によって決まると言えよう。訓練された乗員のみによって運航される船ではそれ相当の大きな衝撃を、不特定の乗客を運ぶ客船や交通艇の類は一般の人々の耐え得る限界をもって、その構造設計の基礎としなければならない。
1930年代までの高速艇は、操船の技術、波を見ての増減速によって強い波浪衝撃を避け、船体に無理をさせないようにしながら、波浪中で高速を発揮し得る程度の軽構造船が大部分であった。これは英米の第2次大戦直前の魚雷艇も同様で、開戦とともに学生出身の多数の若い義勇予備士官が魚雷艇艇長となるに及んで、若い体力と操船技術の未熟とがあいまって波浪衝撃による船体損傷が続出した。そこで、それぞれのケースに対し補強と設計変更を重ねた結果、普通の使用条件では損傷を起こさないようになったが、結果としての船殼重量の増加はそれほど大きなものではなかった。これより乗員の体力の耐え得る限界まで安全な船体構造とするように、設計思想が変化して今日に至っている。
排水量15トンないし100余トンの高速艇の実艇計測結果から、この限界は船首における衝撃加速度をもって示すことができ、高速艇乗員として訓練された乗員が、ある程度の時間連続して航

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION