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「魚雷艇11号」の設計に先立って、外板・甲板と骨とを一体で製造した形材を使用した全溶接構造の工作法などの研究のため、昭和43年(1968)、日本モーターボート協会と船舶用軽金属委員会との共同で6mモーターボートの試作を行った。
この艇の構造は珠山形のフランジの代わりに、ごく幅の狭い外板ストリップを付けた押出形材を用い、その間を平板で継ぐ。甲板はスチフナ2本を有する200m幅の押出形材と平板とを交互に置いたものである。形材と板との継手部は裏当て金を押出形材に取り付けた形の、ラベット継手とも呼ぶべきものとした。予備試験の結果は、この形式の溶接は間隙寸法の精度が案外難しく、曲面を構成する外板で、この開先精度を保つことは実用上困難なので、むしろ単純な突合せ継手とした方が実用的であることが分かった。
試作艇は鋼製の丈夫な溶接用固定ジグを使って、ひずみを拘束しながら溶接したので、ごくわずかなひずみ取りと、余盛を削除して仕上げ、今までにない、FRP船と比べてもひけを取らない表面に仕上がった。
この試作実験で溶接のひずみの減少には、拘束ジグの使用が極めて有効であることが明らかになったが、大型の艇にはこの方法をそのまま応用することは困難なので、取り付けジグを使用してウェブフレームと縦ガーダーを溶接し、それに3本ないし4本を自動溶接で接合した骨付外板を曲げ加工したうえで取り付ける、という方法を採用した。
今日では幅600?oまで骨付板が押出せるようになったので、昭和59年(1984)完成の客船シーボーグ2(520総トン)では上甲板全部と例外板の約65%にこれを採用している。
5083は押出性が悪い材料なので、600?o幅のものは板厚が最低5〜6?o程度のものになるが、5086を使用すると押出性は多少改善されて、幾分薄い幅広押出材が製造できる。耐力は多少劣るが、例外板や甲板など、船底外板に比べて応力が低い部分に使用して合理的な構造を設計することができる。
なお、熱処理材の6N01は押出性が良好なので、幅広の骨付薄板が製造できる。上部構造等に使用すると少ない加工工数で軽量構造が実現できる。
軍用船はどに高性能を追及することなく、むしろ工作の容易さと材料費の低減を優先する業務用艇には、スチフナに球平形材を使用した全溶接構造が採用されるようになり、昭和54年(1979)に完成した長さ55m、500トンの高速客船「ハンイル2(Han ?T1−2)」もこの方法で建造された。ウェブフレームを貫通した縦肋骨は、ウェブフレームに全局溶接され、このようにして組上がった骨構造に、継手の溶接を完了した外板を取り付けるという方法で、溶接ひずみの少ないものが能率よく建造されている。

 

2.4 アルミニウム合金製漁船構造基準の作成

昭和50年(1975)頃から地方造船所でアルミニウム合金製漁船の建造が盛んになってきた。漁業種類は底びき網、定置網、養殖漁業用作業船等が多い。構造は鋼製漁船から換算設計されたものが多いが、実際に必要をはるかに超えた部材寸法の船や、時とすると平水の交通艇としても強

 

 

 

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