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変形に関しても、このH型拘束試験片で説明できるが、わかり易いように第4・9図に局部加熱の図を示して説明しよう。

船の構造の溶接では隅肉接手が非常に多い。ある例では、全溶接長のうちの80%が隅肉溶接であるという計算結果がでている。

この第4・9図の右側を、隅肉溶接であると考えれば、この部分の溶接を行うことにより全体が長くなるが、溶接の熱は局部的に限られているため、左半分は伸びない。その結果この部材自体は(b)図のように左にそりかえった状態になる。ただし、このときに、熱で伸びた長さがそのまま長くなるのではなく、ある程度の分は、塑性変形として板厚方向にふくらむ形となる。この板厚方向にふくらんだ分は溶接が完了して、長さが縮んだときには、もとに戻らないことになる。これは、鋼船工作法の加工の章に述べる線状加熱の曲がり原理と同様である。その結果冷却後の長さは元の長さより短かくなっているために、最終的には(b)図の反対に(c)図のように部材が反って、完了する。これが、溶接構造物に生ずる変形の大部分のものである。

4.2.2 残留応力と変形が船体に及ぼす影響

残留応力が船体に残っていると、外力がかからないうちに、それだけの力がかかっていることになるから、よい影響は与えないと思われるが、いろいろの実験がなされた結果まだどのような悪影響があるかは、明確ではない。

静的な荷重についても、残留応力のある部分は、早く降伏するのは事実であるが、降伏してしまうと、他の部分が降伏するまではその部分に力がかからないので、殆んど問題にならない。

また、疲労破壊や、脆性破壊については、いろいろの実験が行われて、相当定量的に把握できるようになってきている。

変形についての影響としては、建造中に部材の変形があると、船体を組み立てて行く上で種々、不都合な点が生じて、扱いにくい。従って、我々建造者の立場からいっても、部材の変形は極力押えたい。そのために、拘束方法だとか、治具や、溶接順序等もいろいろと工夫されている。

また、変形は使用者である船主の立場から考えても、外観を損なうと共に、溶接により、外板がフレームやロンジ間で凹入するいわゆるヤセ馬という現象は、船の運行中にスラミングによる船底凹損を大きくする要因となる。しかしながら、溶接による変形はある程度はさけられないものであるから、大きな量の変形は手直しすると共に、変形の少ない工作法を常に採用して行くようにしなければならない。

4.2.3 変形

溶接による変形でいろいろと予期しない形状の品物ができ上るが、基本的なものは第4・1表に示すようなものである。

 

 

 

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