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ただしこの分布定数系でも上の例のようにその系の特定の点に本来の集中質量をもつ場合が多い。これに対し、いくつかの個所に質量点あるいは慣性モーメントを集中させ、その間をばねのような復元力を与えるがそれ自身の質量を考えないというものでつながれた系を集中定数系と呼ぶ。

我々がある振動系について実際に知りたい固有振動数は多くの場合1節、2節……という比較的低次の振動数値である。したがってこれらを十分正確に与えてくれる集中定数系のモデルを得ることができれば目的は達するわけである。われわれにとり問題なのは舶用ディーゼル機関の軸系である。まずその主軸系のねじり振動の固有振動の振動数を計算することは必要かつ重要なことである。この場合にはあの複雑なクランク軸についてまずクランク軸上のシリンダ中心の対応点にシリンダ分のコンロッド、クランクジャーナル、クランクアーム…の慣性モーメントが集中していると考えて集中慣性モーメント値を算出する。はずみ車の慣性モーメントはそれ自身集中量として取り扱う。プロペラも同様であるが、プロペラが水中にある場合は当然振動に際してプロペラとともに動く水の質量慣性を考慮に入れた慣性モーメント値を集中量とする。プロペラ軸や中間軸の慣性モーメントは無視されることが多い。しかし大きなフランジや歯車がそれらに付属している場合は当然これらの慣性モーメントを考慮する。クランク軸のねじり剛性を決定するのは大変厄介である。一般には半理論的な計算式、例えばB,I,C,E,R,A1)の式、kerWilson1)の式などを用いて計算される。その結果、補・36図に示すような集中定数系を考えてこれの固有振動数を求めることになる。もちろんV型や水平対向型といった機関の軸系あるいは減速機構を合めた場合の慣性モーメントJ1,J2……の計算方法も確立されている。さてこのようにして作られた系を相当あるいは等価振動系と呼ぶ。上に述べたように舶用ディーゼル機関ではその集中憤性モーメントの数が少なくともシリンダ数にフライホイールとプロペラの2個を加えたものとなる。したがってその系の固有振動数f1、f2……を求めるには先の例で示したように高次代数方程式を解かねばならない。先の場合は3個の集中慣性モーメントに対してpoの2次方程式であった。したがってN個の慣性モーメントの系ならば(N−1)次の代数方程式を解いてp1,p2、……pN-1を求めることになる。しかし5次以上の代数方程式の解析解は存在しない。したがってふつう楽な仕事ではない。一般にはホルツァ(Holzer)の方法と呼ばれる作表型式による数値計算法が用いられる。もちろんこの形の計算にコンピュータが活用されるのはいうまでもない。なお、このホルツァ法は強制力を受けた時の振動計算に利用される。

 

 

 

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