日本財団 図書館


5)ハイカロリーA重油
近年、軽質油と重質油の需給バランスの関係から、灯油、分解軽油、ビスブロークン軽油等がA重油の基材として使用され出しており、A重油の品質が変化している。この場合、品質の変化は着火性の変化に最も顕著に現れるが、現行のJISではA重油に着火性の規定はなく、従って着火性の点で、B,C重油並みのA重油が出て来る可能性がある。特に、陸上用の販売経路で販売されるA重油は外燃(ボイラー)用を目的としており、中にハイカロリーA重油と呼ばれるものがある。これらは一般に船舶用等に販売されているA重油と異なり、石油メーカーにおいてセタン指数等の着火性の規定はされていない。
ハイカロリーA重油(主として分解軽油)は石油メーカーも、内燃機関には使用できない旨のPRを行っているが、着火性の低い燃料では始動困難や白煙の発生、及び高負荷時のPmax異常上昇等の着火、燃焼不良の問題がおこるので注意が必要である。

1.4燃料油の取扱に関する障害

1)燃料油加熱
C重油使用で燃料油の加熱が不十分な場合、燃料噴霧の粒径が大きくなって、後燃え傾向になり、排気温度上昇・過給機早期汚損・潤滑油早期汚損を起こす。

2)燃料油供給圧力
燃料油の供給圧力が低すぎると、負荷が掛からなくなる場合がある。また高過ぎると、燃料ラックの動きが固くなって、ガバナ制御がうまくいかず、ハンチング又は始動不良を起こす場合がある。

3)微生物
燃料油タンク内にカビ又は藻類が繁殖し、燃料油ストレーナの目塞りを起こす場合がある。

1.5高粘度燃料油の使用について

内航船で使用される燃料油は船の運航経済性から漁船などに比較して高粘度油(低質油)が使用される場合が多い。
全般的に高粘度になるに従って油中に含有する水分、硫黄分、残炭等の不純物が多くなるためその除去対策が必要となる。

1)高粘度燃料油対策

(1)燃料の加熱温度
舶用ディーゼル機関の燃料噴射適正粘度はRW.No.1.60秒〜80秒であるので、高粘度燃料油を使用する場合は機関入口でこの粕度までに加熱する必要がある。
従って、加熱に当たってはストレージタンク→セットリングタンク→サービスタンク→機関入口と徐々に要求される温度まで加熱していくことが望ましいが、就航路の北限での厳冬期の燃料温度を想定して上記各タンクの加熱温度を決定する必要がある。
代表例として4・2図に1500秒油の処理系統を示す。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION