日本財団 図書館


 

に対して適切でなかったりするものとの、取捨選択が必要である。都道府県や国レベルで、優良な環境教育プログラムの評価基準を策定したり、学年や教育場面にあわせた推奨プログラムを公表するなど、行政機関がイニシアチブを取る形で、環境教育の実施プログラムの全体的な向上が図られていくことが望まれる。

 

(5) 環境NGOとの連携を
日本において立ち後れが特に目立つ、NGOとの連携は、環境教育においては特に重要である。それは、市民の代弁者として、行政や議会に対して組織的に提案を行うことができ、しかもそれが特定の企業の利益つながらないものであるためには、非営利で公益性の高い団体であるNGOが役割を演じる以外に方法がないからである。
NGOを通して、市民と行政、議会などが真のパートナーシップを結ぶことができれば、環境問題への行政の対処や、市民の行動実践の場の提供など、環境教育の具体的成果を得ることがより効率的に実現できるだろう。

 

(6) 国際社会における日本の役割
最後に挙げられるのは、国際社会においての日本の役割についてである。日本は経済先進国として、発展途上国の安価な資源を積極的に開拓し、経済的に高い水準の国民生活を送ってきたという点で、いわゆる南北問題を引き起こしてきた当事者でもある。
「持続可能の社会の実現」が叫ばれる現在にあっても、発展途上国の多くは、日本など先進国の発展の後を追おうとしており、日本が過去に経験してきた浪費型社会や環境汚染・公害などの深刻な環境問題がすでに起きている国々も、東南アジアの経済急進国・地域を中心に生まれてきている。
このように経済的に成功をおさめ、発展途上国に対して、直接間接に大きな影響力を持っている我が国が、環境問題への対応や環境教育による行動市民の育成に遅れを取ってしまった場合、国際社会や地球環境問題に対する悪影響は計り知れない。世界経済の先導者の一員として、環境教育の分野においても模範的な成果を挙げ、国際社会に貢献していくことは、我が国の重要な責任でもある。

 

(7) 本研究の「まとめ」
最後に、今年度の研究における主要な成果と考察内容の重点部分について、以下のとおり再度まとめておく。
1) 環境教育による問題解決の目標が「持続可能な社会の実現」とされる国際的な流れとは反して、日本の環境教育は環境問題のトピックを個別に扱っている。これでは地球環境問題の理解と解決に不可欠な、地球全体を生態系のつながりとして捉える認識ができず、欧米の環境教育とは大きく異なっている現状が浮かび上がった。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION