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3. 日本文化への欧米先進国型環境教育の導入の問題点

平成7年度から環境教育先進国の調査を開始し、第2年度である本年度までの時点で、環境教育先進国のカリキュラムとプログラムについては、相当数の情報を収集し、整理することができた。ここで、これら先進事例を海外から日本に導入する際の問題点、注意点を整理しておきたい。

 

(1) 信教の自由と欧米の宗教土壌
現代社会では、日本や大部分の先進各国では思想・信条・信教の自由が保証されているが、欧米の自然観、環境観の中には、キリスト教の思想土壌に立脚したものが多いのも事実である。特にノルウェーでは、3章で紹介したとおり、後期中等教育法に、「基本的なキリスト教の価値について理解を上げることに貢献するもの」、という記述がある。
環境教育の推進は、現代国際社会の大きな緊急課題である、環境問題を解決するため、異なった民族、思想、宗教を越えて、全世界で手を組み進めていく必要があるものである。個人が自由に信仰を持つことが保証され、国家がこれに関与しないという、現在の日本国憲法のような、信教の自由の上にしか、世界平和や異民族の対話は成立しない。
欧米の歴史的背景を考えると、キリスト教思想を切り離して考えられないのと同様、我が国の歴史的土壌を考える場合には、仏教、神道、儒教思想を切り離しては考えられない。海外から我が国に進んだ環境教育システムを取り入れる場合には、法律やカリキュラムが生まれた思想的背景にも十分留意して、我が国の国民性や宗教土壌に受け入れられるものとするよう、配慮する必要がある。また、宗教性の強いプログラムの我が国への導入については、世界の対話が求められている環境教育の基本的性質からも、注意を要することを銘記したい。

 

(2) 思想と文化の違い
我が国の自由主義や経済における資本主義思想は、外来の文化として、本格的には明治維新以降に海外からもたらされたものであるが、これに対してヨーロッパの自由主義は、市民革命・産業革命を経て、権力に抵抗し、市民が勝ち取ったという歴史をもっている。
このことは、現在でも欧米と日本との市民性の違いに影響を与えており、欧米では、市民が社会を作るという意識が強いのに対し、我が国では依然として、国の通達や行政の方針を「お上の言葉」として受け取る、上意下達の仕組みが色濃く残っている。これはたとえば国政や行政機関の情報の透明性などにも現れている。日本では行政や議員の不正取引や賄賂事件があった際に、取引先の氏名が黒塗りで伏せられた形でよく「公開」されるが、これに対し欧米マスコミはよく「理解できない日本特有の文化」と評する。欧米では市民を代行する公務員の業務が透明な形で公開されるのは常識以前の問題で、日常の文書のや

 

 

 

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