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第6章 今後の課題と解決のための方向性

1. 環境教育先進国と我が国の置かれた状況の比較

文部省の環境教育指導資料には、1975年国際環境教育会議で採択されたベオグラード憲章が収録され、政府としての環境教育の規範が示されている。
我が国の教育が知識偏重、あるいは興味の喚起と知識のみの構造に長年浸ってきたとよく指摘されるが、政府の出す指導資料に、技能、態度、評価能力、参加への各ステップが明示されたことは大きな進展と言える。2章でも紹介したが、これをここでもう一度見ておきたい。

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図6−1 ベオグラード憲章の環境教育における6つの達成目標

その後、国際的には、トビリシ会議(1977)以降、環境教育の内容が現代の社会問題の解決に具体的スポットを当てる方向に進んだ。2章で紹介したウィスコンシン州の環境教育の基本方針でも、環境教育の達成目標としての「行動」を、より具体化して「市民行動」としており、また国際社会でも、UNCEDのアジェンダ21に見られるように、環境政策の成果に数値目標を求めるなど、具体的な社会改革を求める空気が強まっている。その中で、社会性と国際感覚のある人材育成、さらには社会づくりや国際社会の環境コントロールまでもが現代の環境教育の視野に入ってきている。
我が国の環境教育の全体的流れを見ると、危機的状況にある地球環境についてなど、人間社会を現実視するこうした世界の流れと比較して、まだ「環境のことをよく知ろう」という段階にとどまるものが多く見られ、欧米の環境教育先進国には大きな遅れをとっていると言わざるを得ない。

 

 

 

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