導入されるようになった((財)埼玉県生態系保護協会、1996)。 アメリカの環境教育の歴史的背景を簡単に述べたが、次に全米環境教育法や州法の中での環境教育分野について具体的に見てみる。 アメリカ合衆国は連邦制国家であり、日本の県とは異なり各州の独自性と自主性が大変強い。アメリカ合衆国の憲法によると、教育についての政策は、地方自治、市民に帰属するものとされ、教育の中央集権化が恐れられている(伊藤正則、1988)。従って、教育に関する方針は、基本的には州や、より細かな単位である学校区に委ねられている。 1)連邦政府 連邦レベルでは1990年に全米環境教育法が定められ、環境保護庁(EPA)がリーダーシップをとって環境教育を推進していくことが定められた。この法律の目的は、内容面では環境に関する国民の理解を深め、環境教育と指導者のトレーニングを進め、また政策面では合衆国の政策として全州において環境教育のプログラムを確立し、実施を支援することである。 具体的には、環境保護庁内に環境教育課を設けて、環境教育と指導者の研修の設立と運営のために、高等教育機関、NPO(非営利機関)またはこのような機関の助成金や協力契約を、組合に授与する役割を持たせた。さらに、民間が環境教育に対して資金提供を行うのを促進し、また、環境教育と指導者の研修を世界的に推し進め、環境意識の向上を図るために、全米環境教育研修基金を設立することが求められている。 この環境教育法に基づく政策を実施するために、1992年から1996年までに3,490万ドル(41億8,800万円1ドル=120円換算)を議会は承認している。 2)ウィスコンシン州 ウィスコンシン州は、最も早くから州法に環境教育を位置づけ、また拠点設置や学校教育の支援システムも確立しているなど、アメリカ合衆国全土の中でも環境教育が進んでいる州のひとつとして内外に広く知られている。1935年には合衆国で初めて学校の教員に対して、議会が保全教育を子供に行うように求めた。その後、1983年には州の教育省の規則により、小学校および農業、科学、社会の教員の資格をとるためには、環境教育を行う能カが要求されることとなった。 1985年には、ウィスコンシン州の全ての学校区で、環境教育も含んでのカリキュラムプランをつくることが義務づけられた。カリキュラムの内容については、学校区の独自性に任されているが、環境教育を含んだカリキュラムづくりの方法については州教育省からのガイドが出されている。しかし、現在のところ、約半分の学校区が環境教育を含んだカリキュラムを作成しているのが現状である。
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