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2.環境教育の具体的な目標

環境問題とは、第1章でも述べたとおり、第一次産業から流通、消費に至るまでの、目先の経済利潤のみを追求し構築された大量生産、大量流通、大量消費、大量廃棄の社会経済システムが根本的な原因となっている。
そこで、私たちとしてはこの社会経済システムを改善し、同時に私たちの生存基盤である自然生態系を様々な観点から守り育て、次世代に引き継ぐために、「環境への責任ある行動」を始めなくてはならない。つまり、ベオグラード憲章でいう「参加」がこれに該当する。では、私たちにとっての「環境への責任ある行動」とは、具体的にどのようなものと考えるべきであろうか。
ここでは、アメリカ合衆国の中でも先進的に環境教育に取り組み、国際的にも評価を得ているウィスコンシン州での環境教育カリキュラムを参考にして、「参加」の具体的内容について考えてみることにする。
尚、ウィスコンシン州では、1994年に州内の環境教育推進のために発行していた「AGuide to Curriculum P1anning in Environmental Education」を改訂するにあたり、環境教育の研究者、実践者の中で広く使われてきたいくつかの用語を変えている。例えば、「技能(skills)」→「市民行動の技能(citizen action ski11s)」、「参加(panticipation)」→「市民行動の経験(citizen action experience)」などである。この変更は、その言葉の意味するところをより明確に伝わるように配慮されたものである。
以下にウィスコンシン州が提示している「市民行動の経験(citizen action experience)」の内容を紹介する。
■市民行動の経験(citizen action experience)(Hungerford,et al.1992)
?@政治的行動
有権者、議員、議会、政府機関に対して、持続可能な社会づくりを考え政治的行動を行う個人または組織の価値観に従うよう説得する努力。
【行動例】
○環境上の問題点を指摘し選ばれた議員に手紙を書いたり、直接話をすること。
○環境問題に基づいて立候補する候補者やロビー活動を行うグループを労力面、財政面で支援すること。
?A法的行動
環境的に良くない事柄への法的制限を目的とした個人又は団体の強制的な法律・司法的な行動のこと。
【行動例】
○汚染・ゴミ処理・狩猟関係・動植物の収集関係の法律違反を関係機関に報告すること。
○環境保護を目的とした法律に違反した人(グループ)に対しての訴訟に参加すること。

 

 

 

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