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育においても、環境教育の主要で取り扱い頻度の高いテーマとして、リサイクルが取り上げられている。しかし、本来環境保全を最優先に考えれば、まず浪費型社会の見直しがあるはずであり、続いて使ったものをお金をかけずに使い回すリユースを考えるのが本筋である。ところが、日本では、ビール瓶、牛乳、清涼飲料水その他の容器類が業界ごとに全社で規格統一されて効率的にリユーズされるといった初歩的な段階の環境対策も行われていない。そんな中で、例えば膨大な量の紙などを浪費しておいて、そのリサイクルを叫んでみても、21世紀の地球を守ることには全くつながらない。
これらを見ていくにつれて、改めて、一刻も早く国民全体の環境意識を高め、また環境の観点からの価値判断能力や、環境優先の生き方を選択できる国民性を育むことが急務であることを、強く認識せざるを得ない。

 

(2)ビオトープ・ネットワーク
無計画な開発、都市化などによって、日本の自然は数多くの小さな空間に狭められ、寸断されてしまった。また1960年代以降急速に進んだ、幹線道路や高速道路、新幹線などの主要交通網の整備により、野生生物が乗り越えられない障壁が全国に張り巡らされた。
これら「人間社会側の都合」による自然の寸断は、直接生息場所を破壊するという人間と野生生物の競合に次いで、より深刻な第二の自然破壊といえる。これにより、現代の自然生態系の破壊はより悪質なものになっている。
自然のつながりを寸断することが、地球にとっていかに深刻な事態を招くか、その理由は次の二つに集約される。第1に生態系ピラミッドの崩壊(図1−5)、そして第2に遺伝子保護への打撃である。
先に、図1−4で、高次消費者が頂点に立つ生態系ピラミッドを図示した。高次消費者は、一定の広がりある連続した空間の中にしか生活ができず、たとえばフクロウの場合、1つがいが営巣・育趨を行うには、およそ500m四方の連続した森林と緑地が必要である。高次消費者がいない状態では、その下の野生生物の生息数の調整が取られないため、生物種どうしの競合が激しくなり、生息種数が減少して多様性が失われ、生態系は構造的に崩壊してしまう(図1−5)。
このようになると、生物相は単純化し、同じ面積に生息する生物の種数が急激に減少してしまう。
自然生態系の分断によるもう一つの深刻な問題は、先ほども述べた遺伝子保護への打撃である。UNCEDで締結された生物多様性保全条約以後、世界では如何にして生態系、種、遺伝子等の全ての段階の多様性を保護していくかということに、考えが変化してきている。しかし、自然のつながりを寸断した場合には、多様性保全の最もべースとなる、遺伝子の多様性の維持が難しくなるのである。

 

 

 

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