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果を招き、途上国の一部には著しい工業発展を始めている国がでてきた。また東アジア新進工業諸国・地域(NIES)など、かつて中進国と呼ばれた地域の経済発展も著しい。
これら新進発展諸国の場合、経済的に先進国と競争するための効率化、コストダウンのために、環境汚染の防止対策、廃棄物管理がずさんなケースも多くあり、世界各地で深刻な環境問題を引き起こしている。

 

(3)南北問題
経済優先の社会構造が世界的規模になってきた中で、見逃せない大きな国際問題の一つは、いわゆる南北問題である。経済優先の社会が西側諸国を中心にエスカレートした結果、北側先進国の自由経済社会は、経済競争に生き残るため、コストダウンを優先課題として、大量生産、資源・エネルギー費、原材料費を抑えることを徹底的に追及し始めた。そしてこれが次第に、南側発展途上国の安い原材料と資源を、北側先進国が独占的に買い占めることにつながった。
このことは、大きく次の二つの問題を引き起こした。
第1に、発展途上国側が、先進国に追いつくために経済力を向上しようとしても、入り込む余地がなくなってしまったことである。途上国側にとってみると、自国の資源はすでに北側諸国の企業によって買い占められ、それらの企業によって、付加価値の高い優れた製品の形で輸出されてくるため、資源流出の防止と製品開発・生産能力の向上がいつまで経っても図れないという事態を招いた。
第2には、安い木材などを先進国の企業が買い占めようとした結果、木材のための森林開発が、主として未開発の原生林をターゲットとしてしまい、熱帯雨林を中心に途上国の壊滅的な森林破壊を招いたことである。この熱帯林の破壊は、人間中心の経済観によって引き起こされた、かつてない最大規模の自然生態系の破壊へとつながった。
このほか、UNCEDなど環境問題を議題とする国際会議において、発展途上国側の国際的発言力が増大したことも、生態系保護の新たな障害として、表面化してきた。それは、高い技術力を持つ先進国並みに環境汚染などの規制をかけてしまうと、結果として今後も先進国が経済的に有利であり、発展を阻むものであるという考え方である。具体的には、工場による排水や大気汚染の規制や、CO2規制の国別行動計画から途上国をはずすという問題や、途上国の原生林を先進国が伐採することを抑止しながら、途上国自身による森林伐採は自由に認めてほしいという要望、またワシントン条約により取引が禁止されている半面、例えば商品価値の高い象牙取引については、外貨収入源の確保のため、アフリカゾウの保護増殖の成果を先進国は客観的に認めて欲しい、というアフリカ南部諸国の主張など、多岐にわたっている。

 

 

 

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