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4.人間中心の環境観からの転換

(1)資源利用
現代の環境問題をこれほど深刻化させた原因には、人間が利用する資源は地球上に無尽蔵にある、または自然を人類の未利用空間・遊休空間として見る見方が背景にあると考えられる。
近い将来枯渇することを知っていながら、現在もエネルギー資源、素材資源の両面から、人類は石油に大きな恩恵を受けている。しかしながら、もし石油資源を中心とした経済発展が破綻したならば、世界経済は大きな混乱に陥ることが目に見えている。
代替エネルギーへの転換が叫ばれて20年が経過する現在にあっても、相変わらず石油資源の大量な消費は続いており、人間中心の価値観が社会を左右していることが如実に現れている。
生活・産業文化の転換を図らなくては、21世紀以降の人類の生命は存続できない。地球環境全体の現状を認識し、そこから出発する資源利用計画に一刻も早く立ち返る必要がある。

 

(2)経済競争
第二次世界大戦後、旧ソ連とアメリカ合衆国という二つの超大国の下で、国際政治における東西の冷戦構造ができ、約半世紀にもわたって、西側・東側双方で軍事技術開発、軍需産業の活発化、宇宙開発などがそれぞれに行われてきた。またこのような地球全体を巻き込むような世界の流れができる中で、地球的規模を巻き込む世界経済社会ができあがった。特に経済面において自由競争社会という側面を持っていた西側諸国では、1960年代を境に、次第に世界的な経済競争を激化させてきた。
先進国社会の経済発展に伴い、先進各国の消費者の購買力が向上し、優れた新製品が出れば飛ぶように売れるようになってきた。特に自動車や電化製品分野では、新技術や製品の質の向上、年間販売量の増加に目を見張るものがあったが、この時代の際だった特徴としてはこのほかに、トランジスタの応用や、カメラの発達、衛生通信、リモートセンシング、一部の情報処理分野など、もともと軍事技術として開発されたものを応用した製品も多く見られた。
経済力を持った人々は、より快適な暮らしを求め、物質的充足によって、贅沢で幸せな生活を実現しようとする風潮が顕著になってきた。金銭的解決を図る使い捨て時代の到来である。この傾向は1970年代の前半にピークを迎えたが、現在も、世界経済は依然として人間中心・経済優先の物欲に捕らわれた流れを払拭できていない。
更に近年では、生産拠点の省コストの観点から、海外への技術移転という形で、企業の工場がどんどん途上国に移転している。このことは、途上国側に一定の経済力を与える結

 

 

 

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