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もあり、また今日も目にすることができる。人間の尺度でみるとあたかも不変でいつもそこにあり、無尽蔵で、すこし傷ついてもその計り知れない大きな力で回復するようにも感じられる。こうした旧来型の自然観は、19世紀以前は人間の力が小さかったため問題視されなかった。
しかし、20世紀になり、人類は文明によって世界中の自然を一気に壊してしまうほどの力を持ってしまった。しかもこの自然環境破壊の速度はなかなか抑えることは現実として難しい。実際に現在の環境破壊は進む一方であり、たとえば地球が温暖化すれば海面が上昇し、気候帯が変化して陸上の多くが砂漠化し、人類にとっても死活問題が間近に起こるということを知っていても、なかなかこれをくい止めることができない。
さて、ここで、自然がなぜ大切であるかについて、もう一度はっきりと捉えなおしてから、環境教育の問題へと入っていくことにしたい。

 

(4)白然保護問題の捉え方
先に述べたように、人類の生まれるずっと前から、地球の自然生態系は存在しており、また現代の人類によるような、壊滅的な破壊行為が行われなければ、姿を変えながらも今後も何億年も生きていくのが地球の自然である。
このことを私たち自身に置き換えて考えてみると、一つの重要なことに気づく。自然は私たちの持ち物ではないということである。たとえ自然豊かな中に大邸宅を建てて住んでいて、人間社会の仕組みの中では「自分の持ち物」であるように感じるその自然と土地と財産ではあるものの、このことについて一歩引いて時間軸を入れて考えてみると、先祖もそこに同じ土地を持って住んでいたし、子孫もその土地を受け継いで所有し、暮らしていくであろうことに、気づくのである。
自然や、その他すべての恵みは、祖先が残してくれたものであり、また子孫に明け渡すものである。祖先から受け、子孫に渡す間という、地球の歴史からみれば、一瞬の瞬きほどの時間、私たちは地球環境を借りているだけなのである。
今もし私たちが自然を壊せば、私たち以前のすべての人が恵みを受けることのできた自然に、もう私たち以降の子孫たちは、出会うことも、ふれあうことも、生活のヒントを探り新しい発見をもたらす可能性さえまでも、何もできない。
このように考えると、自然破壊は、私たちの子孫の平等な権利を侵害する行為というふうにも捉えることができる。自然を守るということは、未来の人類が豊かな暮らしを送ることを保証することでもあると言える。
さて、ではそうした大切な自然の、私たちへの恵みとは、そして私たちが地球の一員としてとるべき責任とは、どのようなものだろうか。もう少し詳しく紹介しておこう。

 

 

 

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