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我々の子どもの世代が確実に地球上に暮らしていくには、現在の経済優先・資源浪費型の社会構造を停止し、新しい環境保全型の社会を実現することがなによりも急務である。
(2)持続可能な社会の実現
1972年のストックホルム会議以降注目され、特に1980年代後半から環境に関わる国際会議で中心的キーワードとなったのが、「サステイナブル(持続可能な)」という言葉である。例えば我々が利用する資源の中には、石油資源のように21世紀途中に枯渇することが明らかな有限なものと、循環利用可能なもの、再生産可能な生物資源など、さまざまな異なった種類がある。また森林一つを取っても、短い年数では再森林化が不可能な熱帯林の伐採利用と、進んだ林業技術による育林を伴った温帯林の循環利用とを比較すれば、酸素生産や生物生産、生物遺伝子資源の極めて豊かな熱帯林を破壊することは、明らかに人類の寿命を縮める行為である。
第二次世界大戦以前には、人類は地球環境があまりに広大であるために、その資源や浄化能力が有限であることを意識せずに、あたかも無限で無尽蔵であるかのように開発してきた。しかし第二次世界大戦後の冷戦構造の中で、国際社会は地球の有限性に気づきながらも、政治的利害や経済優先のまま大量消費の浪費型社会を進めてきた結果、1970年代には地球と人類の終末が現実に見えるところまで、破壊を推し進めてしまった。
人類が生き残っていくためには、地球を守る以外にはなく、それには地球環境問題の縮小と解決に向けた社会構造の転換が必要である。また資源・食糧・その他すべての地球から受ける恵みを、食いつぶすのではなく、末永く計画的に利用していく必要がある。
現在では、このような経済優先の社会構造を見直し、環境優先の価値観を確立するという観点から、サステイナブル・ソサイエティ(持続可能な社会)の実現が世界各国の行動指針となっている。1992年のUNCED(日本での通称:地球サミット)では、国際会議のメインテーマとして初めて「持続可能な開発」が全面に出された。ここでは、これまで経済優先の社会構造を放置し、途上国からの安い資源と素材を使っての大量生産・大量消費型の経済社会を容認してきた、先進各国の政治経済体制が見直され、地球環境を優先した、人間社会の再構築を世界各国に求めた。

 

 

 

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