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れ、受信されるまでは、伝送されたメッセージはいかなる法的効力も有しないと規定している。例えば、当事者間にVAN事業者が介在する場合には、発信者は送信したメッセージに関して受信者のアクセス・ポイントにまで責任を負うことになる。[送信メッセージに関する発信者の責任範囲は、A社の場合は、図の(APB)迄であり、B社の場合は、図の(APA)迄である。]

 

VAN事業者を介さない場合には、受信者の受信用コンピュータにメッセージがアクセスしたとき当該メッセージが受信されたものとみなされるので、発信者はそのときまでメッセージの責任を負うことになる。また、VANを利用する当事者は、当該VAN事業者によるメッセージの通信・処理サービスに関する行為について責任を負わなければならない。

 

(4)EDI協定書の役割

取引当事者が電子的にメッセージを交換することを決定した場合、両当事者間には、EDIメッセージの交換に係わる関係が存在する。この関係は、基本的には、EDIによる通信体制の確立を目的として、相互に合意された技術、業務、法律に関する一連の決定によって構築される。この他に、両当事者間には基本取引契約が存在する。これは、両当事者がEDIメッセージによって業務を行うことに合意した場合に生ずる関係である。両当事者間の関係におけるこれら二つの側面を取り決めるために、EDI協定書が使用される。

 

EDIのような新しい通信技術を商取引に導入する場合、この使用方法を規制する規則がないために、法律の改正と新しい取引慣習の発展に関連して様々な課題が提示されている。当事者間の基本取引には、売買、輸送、保険、金融等があるが、いずれの場合でも、例えば、EDIによる商取引の結果の法的な有効性および強制可能性が不確実であることが指摘されている。また、EDI技術に特有のリスクがあり、その責任負担当事者について規制する法律がないので、EDI技術の採用について不安を与えることが考えられる。

 

EDIメッセージによる取引当事者間には長期的に反復して行われる基本取引関係が存在し、またこのような基本取引関係がある場合にEDIのメリットが一層発揮されることを考慮すると、EDI取引当事者間における強い信頼関係の存在が前提条件であると考える。したがって、取引当事者は、通信業務運用に関する諸事項のほかに、EDIメッセージにより締結された契約の有効性、強制可能性、通信の不履行または誤謬に対する責任等の法的諸事項について合意し、EDI協定書に明示しておくことが望ましい。

 

(5)EDI協定書の内容

国際的なEDI協定書を起草するときは、特に、これが用いられる取引の種類、当該EDI取引に関連する法律上の要件等を周到に検討して、最小限必要な条項を明確に規定しなければならない。EDI協定書を作成する場合に、国連モデル交換協定書、その他のモデルEDI協定書等を参考にすることが望ましい。

EDI協定書の主要内容は、通信業務運用に関する条項と法的問題に関する条項に大別され、次のような事項を包含する。

 

 

 

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