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(2)各国のモデルEDI協定書の開発
1980年代中頃、国連ECE/WP.4/T.T.2に提出された文書の中で、初めてモデルEDI協定書の概念が提唱された。1985年、北欧の貿易協会が、NORDIPROを通じて、独自の「通信協定書に関する統一規則」(Uniform Rules on Communication Agreement)を開発した。ICC特別合同委員会の作成したUNCIDによって、EDI取引当事者間にEDI協定書の必要性が認識されるに至った。EDI当事者は、実際にEDI協定書を作成する場合、その一部としてUNCIDを採択することができる。しかし、EDI協定書を作成する際に利用することができるモデルEDI協定書を求めるユーザーの要望に呼応して、その後、数々のモデルEDI協定書(またはガイドライン)が作成された。例えば、次のものを含めて、約20種類のものが開発されている。

 

イ. イギリスEDI協会「標準EDI協定書」(1989年)
イギリスEDI協会「標準EDI協定書」(Standard Electronic Data Interchange Agreement)は、1989年に開発され、同年3月7日から英国のすべてのEDIユーザーに対して本標準協定書を使用することを勧告している。この標準協定書はユーザー・マニュアルと一緒に使用されるように意図されている。本標準協定書は取引当事者に法律的なセキュリティを提供し、ユーザー・マニュアルはEDI通信に必要な技術的なセキュリティを提供する。ユーザー・マニュアルには、メッセージの構造および通信手順に関する技術的な指図がすべて記載されている。
商取引・運送・保険・金融等の関係業者が容易に採用できるような電子データの送受信に関する標準協定書を制定すれば、これによってEDIの使用を促進することができる。イギリスEDI協会の標準協定書はこのような考えに基づいて作成されたのである。この標準協定書を起草するにあたっての基本原則は、これが当事者間のEDIにのみ関係するものであり、商取引上の債権債務等の問題には一切関係しないということである。債権債務関係は当事者間の取引契約によって規定されるものである。この基本原則は、UNCIDに共通するものである。

 

【イギリスEDI協会「標準EDI協定書」については、「平成7年度・EDI制度手続簡易化特別委員会報告書」173〜194頁、参照。】

 

ロ. アメリカ弁護士協会「モデルEDI協定書」(1989年)
1987年にアメリカ弁護士協会は、商取引法部会の下部組織である統一商法典委員会の電子商取引分科会の下に電子メッセージ・サービス専門委員会を設置して、アメリカ国内におけるEDI取引が契約法(特に、米国統一商法典)の基本原則および関連する法的諸問題に及ぼす影響について調査・研究を始めた。翌1988年に、同専門委員会に対して、EDIその他のメッセージ・システムについて特に次の事項を調査することを付託した。
?契約成立および関係諸問題が現行の協定書によりどのように処理されているかを確認すること、
?これらの諸問題に対する統一的解決策を見いだすこと、

 

 

 

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