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7.ノーマライゼーションの実践
 ノーマライゼーションという言葉を、最後に申し上げたいと思いますが、全ての人々が当然持っている通常の生活を送る権利を、障害をもつ人々にもできるだけ保証することです。障害者のいない社会はない。障害がある人であっても、ない人と同じチャンスを持つべきであるという、デンマークのバンク・ミケルソンという人が書いたノーマライゼーションの理念というものが、今から30年ほど前にできてまいりまして、これが世界中に広まりました。障害を持った人やお年寄りがいるように、地域社会にヘルプを必要とする人が何パーセントかいる社会こそが、むしろ正常な社会である。健常者ばかりが集まり、障害者ばかりが集まっているという社会はおかしい。ですから、隔離主義はできるだけやめておこう。できるだけ一緒に住める社会にしよう。それから、できるだけ施設に入らずに、住み慣れた在宅でなるべく生活がつづいてできるようにしようじゃないか。
 それでは、ノーマライゼーションというのは、どこにそんな社会があるんですかという話をしますと、日本の中では具体的にはまだ紹介できる所は少ないと恩います。例えばこの宝塚は非常によく頑張っている市なんですけれども、そこでもはたしてノーマライゼーションを完壁に実施しているかということになりますと、そうは言えないのではないかと恩います。スウェーデンの二つの場所を最後に紹介いたしたいと思います。ストックホルムですけれども、ここに鉄道の駅に近接して住宅があります。この住宅の横には、必ず幼稚園があり幼稚園とお年寄りの住宅を共存させています。公認し、この住宅には健常者に混じって障害を持った人達も、お年寄りも、全部一緒に住んでいる。ここにはレストランや図書館があります。駅に近く駅にはエレベーターがあって、上がれば、そこにすぐ電車が来る。そして、御本人たちは約50m2の個室でプライバシーを守っておられます。昔の自分の趣味を生かしたような家具を持ち込んでいます。そしてここには障害をもつ人々が安心して生きるためのホームヘルパーと看護婦さんが、24時間勤務してケアにあたっておられるわけです。お年寄りは長年使ってきた古い家具も多く持ち込んで、昔の生活をそのまま維持しながら継続して生活しています。介護を要する重度の障害者の人々も住んでおり各部屋にあるアラームを押すことによりまして連絡が事務所に来ます。重度の障害者は、手がきかないために自分で本のぺ一ジをめくれません。そこでぺージをめくるぺージタンナーという機械に本を差し込んでくれるヘルプを頼んであります。勿論夕方に食事をすませてから、ベッドヘあがる時に自分であがれませんから、その時にはケアしてもらわなくてはならない。介護を必要とする障害者や高齢者が地域で住みつづけるためには、ホームヘルパーさんと看護婦さんがいて、24時間体制をとっていくことが大切です。
 もう一つの小さなノールショッピングという町を紹介したいと思います。、これは新しくノーマライゼーションを実践している町ですけれども、ここにある施設というのは、小学校から児童館、保育園、レストランがあります。この中に普通の生協住宅の中に(188戸ありますが)59戸を老人および障害者用に市が借りあげまして、そこにこういうスタッフの人がお世話させていただいているわけです。そこには小学校があり、障害を持った人たちが住んでおります。お年寄りが作業療法をしながら生き甲斐を求めているところがあります。そこにはみんなで話し合う、色んな人が話し合うチャンスがあります。
 このようにとにかく出来るだけ施設よりも一般住宅やグルーブホームで生活していこう、それから学校も特殊養護学校はやめておこうと、出来るだけ普通の学校に行こうと、それから職業は授産施設のようなものでなくて、出来るだけ一般の工場で働いていこうと。もっと余暇、リクリエーションに向かって働いていこうと。これがノーマライゼーションの理念です。  時間がまいったようでございます。私は体の不自由な人たちと長い間一緒に生活してまいりまして、やはり、ソサイティ・フォア・オール、人間すべて平等である、素晴らしい人生を送る権利は

 

 

 

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