い観測結果です。
海水中の二酸化炭素のふるまい気体は一般に、海水の温度が低ければ低いほどより多く海水に溶け込むことができ、低温の海域は、大気中の二酸化炭素を吸収する可能性があります。
しかし、観測結果の例でも明らかなように海水中の二酸化炭素濃度は水温による変化だけでは説明できない以下のような興味深い変化をします。
海水中の二酸化炭素は一般に下層の海水に多く含まれています。
海洋では、この下層の海水が上昇(湧昇)する海域があります。たとえば、太平洋赤道域のペルー沖は湧昇の起きているところです。この湧昇により二酸化炭素を多く含んだ海水が海面に広がり、太平洋東部赤道域では二酸化炭素の放出域となっていると考えられています。
また、海水中の二酸化炭素は植物プランクトンによって摂取されます。動物プランクトンに捕食された植物プランクトンの一部は糞粒などとして沈み、深層に二酸化炭素を運びます。プランクトンの多い海域が春先にプランクトンが大量に増殖する海域では二酸化炭素を消費するため、大気から二酸化炭素を吸収しやすくなります。
このように、大気と海洋との間の二酸化炭素の交換量を見積もるために必要な表面海水中の二酸化炭素の分布や変動は、水温、湧昇、プランクトンの動向などによって大きく影響されるため、全球での交換量の見積りを困難にしているのです。海の中での二酸化炭素の振る舞いは、海域や季節によって大きく異なりますが、まだほとんど観測されていない季節や海域があります。
このため、今後も気象庁は海洋気象観測船「凌風丸」により、西太平洋でさまざまな季節について広範な観測を実施し、大気と海洋間の二酸化炭素の交換量を明らかにしていきます。また、海水中の二酸化炭素の観測、海水の動きやプランクトンの分布などと関連づけた観測による海水中での二酸化炭素のふるまいを明らかにしていきます。

 

海洋汚染防止ワンポイント(97)

「排他的経済水域及び大陸棚に関する法律」の解説
排他的経済水域及び大陸棚に関する法律には、我が国の主権的権利とその他の権利を行使する水域として「排他的経済水域」を設けると明記されました。
主権的権利とは、水産物等生物資源を含む天然資源の探査、開発、保護に関する排他的な権利ならびに風力発電等の経済的な理由で行われるその他の活動に関する排他的な権利です。
同時に排他的経済水域内の人工島、施設、構築物の設置および利用、海洋の科学的調査、海洋環境の保護および保全に関しては、我が国の管轄権が生じます。これらに関しては我が国の法令が適用され、人工島等は国内にあるものとみなして法令が適用されます。ただし、人工島等が領海外の水域にあるという特別の事情を考慮して、法令で適用関係の整理や調整に必要な事項を定めることができます。
我が国の排他的経済水域の範囲は、領海の外側で領海基線から二百海里の距離にある線までの海域ならびにその海底と海底下となります。我が国の領海基線と隣国の領海基線との距離が四百海里に満たない場合は、原則的に「中間線」までを排他的経済水域の範囲とします。
中間線とは、我が国の領海基線からの距離と、隣国の領海基線からの距離とが等しい線のことです。ただし、我が国と隣国との間で合意した線がある場合は、この中間線に代わって、その線が排他的経済水域の境界線となります。つまり、日韓、日中、日ロ、日比、日米間における相互の排他的経済水域の境界線は、中間線もしくは両国の間で合意した線となります。
(運輪省環境・海洋課海洋室)

 

 

 

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