平成八年版「海上保安の現況」概要

海上保安庁は、十一月一日の閣議に平成八年版「海上保安の現況」(海上保安白書)を報告した。白書は、冒頭に「海上保安をめぐる主な出来事」を紹介し「第一部海における新たな秩序の維持に向けて」「第二部海上保安の動向」の二部で構成されている。
ここでは、その中から、去る七月二十日わが国において効力を生じた「国連海洋法」の関連および当協会に関係の深い「海難の救助」ならびに「海洋環境の保全と海上防災」を中心にその概要を抜粋した。
概要
海上保安庁は、海上における治安の維持、海難の救助、海上交通の安全確保、海洋情報の提供、海洋環境の保全等の各分野において、その時々の経済社会情勢の変化に対応した海上保安業務を遂行してきている。
「海上保安の現況」は、これら海上保安庁が実施している業務について、広く国民に紹介し、理解と協力を得ることを目的としている。
平成八年「海上保安の現況」は「海上保安をめぐる主な出来事」「第一部海における新たな秩序の維持に向けて」「第二部海上保安の動向」の構成となっている。
海上保安をめぐる主な出来事では、平成七年九月から平成八年八月までの一年間における様々な動きの中で、海上保安業務に対する国民の理解を得る上で特に話題性のある事柄を記述している。
第一部では、海洋法に関する国際連合条約(国連海洋法条約)が、平成六年十一月十六日に発効し、わが国についても、第一三六回国会で承認の後、国連事務総長に批准書を寄託したことにより、七月二十日に効力を生じたことから、これに伴い新たな海洋秩序が確立されたとの認識のもと、海上保安庁の業務の変化に焦点を当てて記述している。
第一章では、国連海洋法条約の締結に至る経緯、その概要および締結の際の国内法制整備について記述している。
第二章では、不法入国事犯対策、銃器・薬物密輸事犯の水際取締り対策、領海警備関係、外国漁船対策、外国船舶に係わる油等の排出事犯対策等の海上警備分野における国連海洋法条約の締結に伴う変化を中心に記述している。
第三章では、管轄海域確定のための海洋調査、大陸棚の限界の設定のための海洋調査等の水路分野における国連海洋法条約の締結に伴う業務を中心に記述している。
第四章では、第二、第三章で記述した国連海洋法条約の締結に伴う海上保安業務の増大等、当庁の業務ニーズに的確に対応するための体制整備について記述している。
第二部では、平成七年を中心に海上保安庁が実施した業務と現況について記述している。
第一部
第一章 国連海洋法条約の締結と国内法制の整備
1 国連海洋法条約
(1)国連海洋法条約の締結
*国連海洋法条約は、第三次国連海洋法会議における交渉を経て、五七年四月同会議において採択
*同条約は、平成六年十一月十六日に発効するとともに、わが国も同条約の締結により本年七月二十

 

 

 

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