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「わが国も国連海洋法条約を締結し、本年七月にわが国について効力を生じました。これに伴い海洋の法的秩序の維持を図るとともに、海洋環境保全等の締約国の責務を果たすため、関連国内法の整備が行われました。焦点は排他的経済水域の設定で、これによってわが国は、漁業にとどまらず環境保全等の分野で、二百海里までの沿岸海域を管轄することになりますが、その管轄する海洋の面積は世界で七番目の広さと言われています。当庁としても、この排他的経済水域での外国船の漁業取締りや海洋汚染の取締りなどが主要な責務となってまいります。さらに国内法の整備により、領海の外側の接続水域での密航・密輸の取締りが可能になり、海上保安庁の業務は飛躍的に増えることになりました」
「条約は、これまでの旗国中心の管轄から沿岸国による管轄を大幅に認めています。そのほうが海洋の実効的な管理が可能ということでしょう。わが国も海の恵みを後世に残す責務がありますから、管理体制を整備して広大な水域の権益を守る義務があります」と任務の重大性を語る。

 

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「安全面では、プレジャーボートの海難がここ数年来増え続けております。用途別では漁船の海難が依然一位を占めていますが、これは大勢としては減少傾向にあり、あと数年で逆転の可能性も考えられます。アマの方が海に親しむことは好ましいのですが、海難の原因をみますと、基本的な安全の知識・技能の欠如や不注意によるものが多いのです。優しい海は、時に怒涛と急変することがありますから"板子一枚下は地獄"の言葉を忘れてはなりません」と海の怖さを説く。
「海洋法条約のわが国についての発効を契機に、尖閣諸島等の領有権問題が再燃しておりますが、日本の主権は毅然として守らなければなりません。当庁の業務が質量とも増えることになりましたが、勢力の急増は難しいので、当面は現有勢力で広い海洋の安全・権益管理をいかに効率的に確保するかが私に課せられた任務だと思います」と結ぶ。
〔略歴〕昭和15年生まれ長野県出身、海上保安大学卒、巡視船ぶじ船長、五管警救部長、十管本部長などを経て本年四月現職。

 

 

 

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