気になる船名あれこれ(22)

安田螢治(気仙沼海運支局船舶検査長)
〔植物船名〕
前回に続いて花や草木等を由来とする船名を集めてみた。海上保安庁の巡視艇に付けられていない船名を平成八年版「日本船名録」から採っていこう。
*あおば(青葉)初夏の瑞々しく青々とした葉から名付けられた青葉丸は六隻あった。うち昭和五十四年進水の青葉丸(三、七一五総トン)は、興和海運の沿海仕様のセメント船である。
あおばという船名は三隻。松島湾の客船あおば(二二七総トン)は海底透視船で、四百五十人の旅客を乗せて湾内を走る。
あおば丸(四四九総トン)は平成元年、第一あおば丸は同二年、第二あおば丸は同三年、第三あおば丸は同七年の進水で、四隻とも大阪船籍で丸三海運所属の近海を航行区域とする貨物船。
*あざみダイトーコーポレーション所有に曳船あざみ(二三四総トン)がある。
*あすなろ翌檜とも書くが、井上靖の「あすなろ物語」でも知られるヒノキ科の常緑高木。「明日は槍になろう」から命名されたという俗説がある。千葉ポートサービスが、あすなろ(八八総トン)を走らせている。
*あずき小豆島の土庄港と四国の高松港の二十二キロを結ぶのが関西急行フェリーのあずき丸一六九三総トン)。乗用車六十台、旅客四百九十二人搭載可能、あずきを漢字で書げば小豆。小豆島からの由来かもしれない。
*いちょう東京都のゴミ運搬船は第一いちょう丸(二〇四総トン)という。いちょうは東京都の木に制定されている。ちなみに神奈川や大阪も県や府の木がいちょうである。
*うめ佐世保市の給水船うめ丸(一六一総トン)や新潟の日本海曳船所有うめ丸(一八五総トン)などがある。福岡配属の巡視艇とびうめ(二一総トン)は菅原道真の「東風吹かばにほいおこせよ梅の花生なしとて春な忘れそ」の歌で有名な飛梅からの命名。
*えのきニレ科の落葉高木だが榎本回漕店の貨物船第十えのき丸(五五〇総トン)は榎本という姓名そのものが榎(えのき)でもある。
*えびね観賞用のラン科の多年草。客船えびね丸(八一総トン)は三宅島と御蔵島を一時間で走る。
東京都御蔵島村が運航。石巻船籍にもえびね丸(四八総トン)が一隻。
*エルムハルニレのことだが、北半球には二十種類くらいあるそうだ。船名にしているのは宮城県女川の丸中金華山汽船の旅客船エルム(一九九総トン)。昭和四十七年の進水で旅客定員五百人。
地中海が原産。小豆島で栽培し、香川県は県木・県花に制定している。高松市に本社を置く関西急行フェリーは、おりいぶ(六七総トン、軽合金製)、第三おりいぶ丸(六九九総トン)、第八おりいぶ丸(六九八総トン)を所有している。おりーぶ(一一六総トン)は名鉄海上観光船の客船。
*オレンジみかん類に由来するのか、色から採ったのか定かではないが、大阪〜東予・新居浜などの航路を持つ四国開発フェリーは、おれんじ7(九、九一七総トン)をはじめ、おれんじエース、ニューおれんじの三隻に「おれんじ」を付けている。
また山口県柳井と三津浜(松山市)間六二・一キロを二時間二十五分で運航している防予汽船は、社船のフェリーにおれんじえーす(九八一総トン)・おれんじほーぷ・おれんじえんぜる(六九八総トン)・おれんじびーなす・おれんじくいーん・おれんじまーきゅりー・おれんじじゅぴたー・おれんじぷりんせすと、八隻すべてに「おれんじ」を冠とし、航路もオレンジラインと称している。
*かえで葉が蛙の手に似ているので蛙手(かえるで)という言葉が転じて橋という。楓丸(一九九総トン)は函館ポートサービスのタグ。かえで丸(四三総トン)は防府船籍。
*かつら桂は腐りにくいので昔から船材にも多く使われてきた。「天の海に月の船浮け桂櫂かけて

 

 

 

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