月の大きさについて

第六管区海上保安部「海の相談室」
「出た出た、月が、まあるい、まあるい、まんまるい、おぼんのような月が……」という歌にあるように、夕方ごろ水平線から上がってくる満月は、だれが見てもおぼんのように大きく見えますね。
でも、そんなとき五円玉を手にもって目から五十五センチぐらい離してその穴から月を覗いてみてください。月がすっぽり穴に入ることでしよう。
とてもおぼんのような大きさでないことがわかります。
月の実際の平均の大きさは直径約三千四百キロメートル、地球からの平均距離は約三十八万キロメートルあるので、視直径は角度で約三一分です(図1)。
この角度は、目から大人の腕の長さぐらい離した五円玉の穴の大きさに相当します。月が地平線から上がってくるときも、空高く真上にいるときもこの見かけの大きさは変わらないのです。ちなみに太陽も月とほぼ同じ大きさです。
それではなぜ、地平線上にいる月や太陽が大きく見えるのでしょう。これは私たちが感じる空の形に深く関係しています。
ほとんどの人は、空はまるく見えます。これは、遠くにある物が距離が近いのか遠いのかが区別つかないとき、それらは皆同じ距離にあるとしてしまう心理的なものです。
もう少し空を詳しく見ると、空の真上の方が真横の方より近く見えて、ちょうどおわんを伏せたような形に見えるはずです(図2)

 

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また地平線上には、埃やチリなどが多く見え、上空の方より視界があまりよくなく、横の方の空が遠くにあるように見えることにもよります。
よく空気の澄んだ場所で、夜空を見上げますと、星に手が届きそうに空が近くに見えた経験があることでしよう。
つまり、地平線上の月が大きく見えるわけは、このおわんを伏せたような見かけの空に月を写して見るからなのです(図3)。
ぜひ一度五円玉で、月を覗いて試してみてください。

 

 

 

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