平成八年版「海難審判の現状」から

海難の発生状況とその原因

海難審判庁は九月下旬、平成八年版海難審判の現況(海難審判白書)を発表した。白書は六章で構成され、海難審判業務の現状を紹介するため、平成七年における海難の発生状況、調査および審判の状況、審判により究明された海難の原因等について、統計的な分析を加えてとりまとめてある。ここでは、その中から海難の発生状況と海難の原因を中心に紹介する。
海難および調査の状況(第二章)
海難の発生
T 海難の認知
海上保安官、管海官庁、警察官および市町村長ならびに外国に駐在する領事官は、海難の事実が発生したことを知ったときには、理事官に報告しなければならないことになっている。
これらの報告は、法第二条の海難に該当しない船内での障害等も含んでいるため、理事官は、法第二条に該当するものであるかどうかを審査し、法第二条に該当する海難であると認知したときは直ちにその事実の調査を開始し、該当しないものは非該当として処理している。
また、理事官は、自ら新聞、テレビ等の報道などにより、海難を直接認知することもあり、海上保安官、管海官庁等からの報告とあわせて、我が国周辺水域はもちろん世界中の各水域で発生したものを広く認知することができる。
U 海難の発生の動向
平成七年に発生した海難で、理事官が七年一月から八年三月までに認知した海難は八、四九八件、九、九〇七隻であり、前年に比べ件数で三七件(○・四%)隻数で一二五隻(一・三%)の減少であった。
過去五年間における件数および隻数の推移をみると、減少傾向が続いている。なお、五年間の平均発生件数および隻数は九、三八九件、一一、〇九一隻である。
V 発生海難の分析
1、 水域別からみた登生の状況水域別の発生状況を領海内、領海外で大別してみると、領海内では七、六六九件(九〇・二%)、領海外では八二九件(九・三%)となっており、前年に比べ領海内が一八八件の増加、領海外で二二五件の減少となっている。
2、 事件の種類別からみた発生の状況発生の状況を事件種類別にみると、乗場の一、四九五件(一七・六%)、衝突(単)の一、一九八件(一四・一%)、衝突の一、〇三五件(一二・二%)が目立っている(遭難は三、三五一件〈三九・四%〉である)。
また事件種類を船舶の種類別にみると、衝突では貨物船の六六五隻、漁船の六四四隻、衝突(単)では貨物船の六一七隻、乗場では

発生件数および隻数の推移

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