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「海難審判は、海難の原因を明らかにして、同種海難の発生防止に寄与することを目的にしており、審判の結論として出される裁決は、例えば医学の分野で、病死された方の病変の確認のために行われる病理解剖のようなものであって、海難の防止に役立つものでなければなりません」と海難審判の目的と役割を述べる。
「国際社会においても、IMOでは何回も海難事故調査の国際協力について決議されており、より効果があがる国際協力の模索が続けられ、現在、わが国も参加して、新たに"海難調査における国際標準及び勧告方式のコード"案が討議されています。また、国際海難調査官会議が本年六月にニューヨークで開かれ、当庁から理事官が出席してわが国の海難審判の現況説明に当たりました。最近は、外国からの公式、非公式の調査依頼が数多く寄せられるようになり、海上保安庁はじめ関係機関と連絡をとりながら回答しているところです」と海難審判の国際化の動きを説明する。
「当庁では、毎年"海難審判の現況。、船舶の種類別海難を分析した実態シリーズ"を刊行するとともに、研修会、講習会などに講師を派遣して海難防止の広報活動をしております。海難事故はその九〇パーセントが人的要因と関係していると言われています。その原因調査は、証拠の保全と収集の困難に加えて、関係者の供述に合理的を欠くものもありますが、私どもは原因判断に誤りのないように努力することにより海難防止に尽くしたと考えています」と海難防止への取り組みと基本的な考えを語る。
「わが国の海難審判は、明治三十年七月に施行された海員懲戒法をもって始まりとしており、昭和二十二年十一月に公布された海難審判法がこれを引き継いで、平成九年で百年になります。この節目に当たり、気持ちを新たに海難防止に努めることを誓って、記念行事を計画しております」と海難審判百年の節目に当たっての抱負で結ぶ。

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〔略歴〕S7年1月2日東京生まれ、S31年東京商船大学卒業、三井船舶入社、S37年2月航海訓練所入所、S53年12月海難審判庁入庁現在に至る。

 

 

 

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