祝日「海の日」のために

前国民の祝日「海の日」制定推進国民会議事務局長
前日本海難防止協会理事長
筒居博司
はじめに
間もなく平成八年七月二十日。長い年月、多くの人の意欲と力添えによって制定された国民の祝日「海の日」。
数多い祝日の中で、初めて国民の運動によってできた祝日「海の日」の第一回の日である。その日が近づいたこの機会に、難産の末に産まれた国民の祝日を十分有意義なものとするため、改めて「海の日」の意義や制定までの経過を振り返ってみたい。

 

07-009-1.gif

 

一、 祝日「海の日」の意義
生命の母
地球ができてしばらくして、今から約四十五億年前に海ができた。そして最初の生命は、約四十億年前に海で誕生した。殺菌作用のある強い紫外線に晒された陸上では生命が誕生することは不可能であった。最初の生命は、海水中の無機物が海底から噴き出す極めて高温の熱水の刺激を受けて、生命の素材となるアミノ酸や核酸など低分子の有機物に変化し、さらにその後タンパク質や遺伝子などの高分子有機物に変化して誕生したと考えられている。
単細胞の植物プランクトンは、光合成によって酸素を放出した。大気中に出た酸素は、紫外線によりオゾンに変化し、大気を覆ったオゾン層が紫外線を弱めることとなった。生物が海の中から陸上に上がったのは、四億数千万年前と考えられている。母親の胎内で胎児を育む羊水は、海水とほとんど同じ組成であることを見ても、海は生命の母体であることをうかがわせる。
人類と海
海は、地球上に生命を生み、育んだだけではなく、人類は、海から獲れる魚介類を食料とし、海を交通の場として利用することにより、物質を運び、文化を交流させ、文明を築いてきた。
さらに近年の海洋学の誕生と科学技術の進歩によって、海上横送、水産・鉱物資源、エネルギー、空間など海の可能性が飛躍的に広がるとともに、地球温暖化など環境問題への海の大きなかかわりも明らかになってきた。
地球温暖化の最大要因である二酸化炭素についていえば、人類が産業革命以降消費した石化燃料の量から計算した二酸化炭素の量は現在の大気中に含まれる二酸化炭素の量の二倍になるといわれる。現在の大気中の二酸化炭素が半分の量で済んでいるのは、海が二酸化炭素を吸収しているからである。海洋には、大気中に存在する二酸化炭素の五十数倍の量の二酸化炭素が炭酸などの形で溶け込んでいるのである。
気候の面からも、海は、暑さ寒さを緩和し、雨をもたらし樹木を育て、飲料水を提供してくれる。二一〇〇年には百十一億九千万人に達すると推定される世界の人口を養うためには、海に依存せざ

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ