主導権の発揮に期待

運輸省運輸政策局次長 龍野孝雄

 

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社団法人日本海難防止協会の平成八年度通常総会にあたり、一言ご挨拶を申し上げます。
貴協会は、一九五八年の設立以来これまで、海難防止および海洋汚染防止に携わる民間団体の中心的な存在として、各種調査研究、全国各地での講習会や訪船指導などを通じて関係者の指導啓蒙を図られるなど、幾多の貴重な成果を収めてまいりました。
特に最近は、国際的な場における活躍には顕著なものがあり、誠に時宜にかなったものと思われます。
IMO(国際海事機関一では、新たな海上安全および環境問題に対応するため、条約策定作業などが引き続き間断なく行われていますが、貴協会は民間サイドを代表して、このIMOにおける協議へ積極的に参画されております。また、日本海および黄海の海洋環境の保全を目的として、日本、中国等の沿岸国によって定められた北西太平洋地域海計画(NOWPAP)について、貴協会は運輸省と共同で、この枠組みに基づく協力体制の整備を促進しておられるところであります。
昨年秋に中国で開催されたブルーマリンセミナーには、私も参加する機会を得ましたが、海洋汚染防止に関する知識・技術の向上はもちろん、日中の当局間の相互交流を深める上でも、非常に大きな成果が上がったと認識しております。本年も七月に、新潟においてNOWPAPの専門家会合を運輸省と共同で開催すると聞いており、同様な成果を上げられるよう期待しております。
船舶交通の輻輳するマラッカ・シンガポール海峡は、原油を中心とする物資の輸送路として、わが国を含む極東の経済活動を支える重要な海運ルートであり、同海峡の航行安全、海洋環境の保全は、極めて重要な課題であります。
このような情勢の中、貴協会におかれては議案にもありますように、この七月にシンガポールに事務所をオープンされる予定と伺っており、その役割が期待されるところであります。
今年は七月二十日海の日が祝日となる初めての年であります。海の日祝日制定にあたり、働きかけた私たち関係者にとって感無量なものがあります。
時あたかも、海洋問題一般を包括的に規律した海洋法条約の締結が現国会に諮られております。運輸省としても、同条約の主要事項の一つである「海洋環境の保護および保全」などの実行を担保するため、海洋汚染防止法と海上保安庁法の改正をはじめとする関連法案を国会に諮っているところであります。
海洋国家としての国民的合意が得られた「海の日」祝日化と、海洋法の締結に伴う新たな海洋秩序のもとで、貴協会が一層のイニシアチブを発揮されることが期待されており、その豊富な経験と卓越した見識を活用され、なお、一層の、こ努力を傾注されますようお願い中し上げる次第です。
最後に、貴協会および会員の皆様方のますますの。こ健康とご発展を心からお祈りいたしまして、私の挨拶とさせていただきます。

 

 

 

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