示のブイが、強い風と潮のため移動していたのではないかとの見方があるが、確認されていない。
油流出が、大量に起こった原因としては、まず、本船がシングルハル・タンカーであることに起因するのではないかとの問題が提起された。
この海域では、昨年十月、Borga号(十二万重量トン)が座礁したにもかかわらず、油の流出がなかったのは、同船がダブルハルであったからとの見方があり、シングルハルが問題視されている。
野党労働党の議員には、英国に就航するタンカーは、ダブルハルに限るべきである旨発言している者もある。他方、専門紙では、現在のダブルハル・タンカーは、世界の全タンカー三千五百隻中二百五十隻程度であること、ダブルハル部分に海水が浸入した場合にサルベージが困難となったり、復原性に問題が生じうることなどの問題もあると指摘されている。
大量の油流出で、さらに問題となっているのは、えい航作業の遅滞である。大型タグボートが直ちに利用できなかったことに対して問題が提起されている。この背景には、九三年にシェトランド諸島沖で起こったBraear号事故に関するLord Donaldson報告では、大型タグボートの必要性が指摘されており、これを受けて、シェトランドとドーバーには大型タグボートが配備されたが、この地域には配備されなかったという事情がある。
これ以上の油流出は避けられる見通しであるが、事故原因および流出拡大の原因の究明、これらに対する対策、油濁損害に対する補償等はこれからの問題となる。

海洋汚染防止ワンポイント(90)

海洋法条約(2)
先月は、国連海洋法条約の採択と発効までの流れについて紹介しましたので、今月は条約の主要な点を紹介します。
海洋法条約は、条約四つ分の規定をまとめたものであるために、条文だけで一冊の本ができてしまうほど盛りだくさんな内容になっています。
その中でも主要な点を列挙しますと@領海A接続水域B排他的経済水域C大陸棚D海洋環境の保護および保全の五点になります。以下にそれぞれの概要を簡単に説明します。
〈領海〉各国とも、十二海里を超えない範囲で領海の幅を定められます。また領海内でのすべての船舶の通航は、沿岸国の平和、秩序、安全を害しない限り無害通航として認められます。〈接続水域〉各国は、領海の外側について、陸岸から二十四海里までの範囲を接続水域として設定でき、そこでは領土・領海内の通関、出入国管理などの法令違反の防止や違反の処罰が認められます。
〈寿輸的経済水域〉各国は、領海の外側で、陸岸から二百海里までの海域を排他的経済水域として設定できます。そこでは天然資源の開発などについて、主権的権利が認められ、また海洋環境保全、海洋の科学的調査、人工島などの設置や利用に関する管轄権が認められます。
〈大陸棚〉二百海里を超えて自然の領土の延長をたどり、大陸の外縁まで延びている海底を、最大三百五十海里までの範囲で大陸棚として設定できます。設定した国は、天然資源の開発についての主権的権利を有するほか、人工島などの設置や利用に関する管轄権が認められます。
〈海洋原境の保護・保全〉海洋汚染の取り締まりについて、従来からの旗国主義の原則を維持しながら、一定の条件の下での沿岸国および入港国の管轄権が認められることになります。
国連海洋法条約には、この外にも広い分野にわたって数多くの規定がありますが、海洋法条約を批准するためには、国内・国外的に多くの準備が必要であり、現在、この条約の批准に向けて、国内体制の整備などの準備作業が進められております。
(連輪政策局環境・海洋課)

 

 

 

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