シーエンプレス号油流失事故(社)日本海難防止協会ロンドン連絡事務所

所長大和秀一
英国南ウェールズ沖で発生した原油タンカーSea Empress号油流出事故について、現地新聞情報に基づき報告する。
1、船舶の概要
シーエンプレス号(一四七、二七三重量トン)は、一九九三年にスペインで建造されたシングルハルの原油タンカーで、現在リベリア船籍、Acomarit社(本社ジュネーブ。本船は、そのグラスゴー支店担当)が運航していた。乗組員約三十人はロシア人。

04-019-1.gif

2、事故および対応の概要
最初の座礁は、二月十五日だった。このとき本船は、十三万トンの軽質原油をスコットランドで船積みし、事故現場に近いミルフォードヘイブン港にある石油精製基地に向け航行中であった。午後八時ごろ、セントアンズヘッド(岬)で同港に向けて針路を取ろうをしていたときに座礁、右舷側を破損した。このときは、いったん離礁して、岬から約一マイルのところに投錨した。
本船にサルベージ技術者が乗り込み四隻のタグボートが船体を維持しようとしたが、強風で丸一日ほとんど作業ができなかった。
この間の油流出量は、約四千トンと言われている。これに対応するため、コーストガードの油濁艦隊が緊急時計画に基づき中和剤散布のため七機の航空機を派遣したほか、既に漂着した油の清掃のため、地方自治体職員、石油精製基地従業員等が駆り出された。なお十六日午後、連輪大臣がヘリで現地を視察している。
十七日、タグボートを使い、船首を風に立てる作業を行っていたところ、午後六時半ごろ、タグロープが切れて本船が振れ回ったため、さらにアンカーチェーンも切れ、岬から半マイルの海域に再び座礁してしまった。
十八日、サルベージの専門家がヘリコプターで乗船したが、強風とタグボートのえい航能力不足のため、作業は進まず、波浪のため危険があると判断され、乗組員等はヘリコプターで離船し、世界最大規模のえい航能力を持つDe Yue号(中国のタグボートで、近傍で作業を行っていた)の到着後天候の状況を見ながら、えい航して砂地に乗り揚げさせ、瀬取りすることにした。
十九・二十日には、乗組員等は再び乗船したものの、えい航作業は全く進まなかった。タンクに空気を送り込み、船体を浮かせるための作業が行われた模様である。なお、航空機からの中和剤散布は行われた。また、アコマリット社の二十日までの調査では、このときまでに約四万トンの油が流出してのではないかと見ている。
二十一日午後七時十五分ごろ、十二隻のタグボートにえい航されて本船は離礁し、近傍の旧石油桟橋に着桟し、残った原油の抜き取り作業のための準備が行われた。着桟時までの油流出量は、六万五千トン程度になるのではないかとの見方がある。
3、原因および今後の問題
事故原因は不明である。船体自体については、初期調査では、エンジンおよび舵についても問題はなかったと報じられている。乗組員については、アコマリット社によれば、本船の船長は、六六年に船長となり、七九年から十五万トン級に、また、九三年から本船に乗り組んでおり、本船については熟知していたとのことである。そして事故当時、水先人も乗船していたとのことである。なお、航路標

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ