海難救助に新たな動き

(社)日本水難救済会(以下「水救会」という)では、海難救助活動について、従来の無償救助から有償救助に切り換えることを検討しているが、その概要は次の通りである。
1、背景
水教会は、これまでボランティア精神により救助活動を実施していることと、その活動のほとんどが同僚漁船間の相互扶助的な性格を有してきたことから、救助報酬は無償としてきた。
しかしながら、被救助者が自発的に燃料代として必要経費を支払うケースが漁船海難出動の三分の一以上にも達し、さらに、近年の海洋レジャーの進展に伴いプレジャーボート等の海難にも対応するようになってきたことから、必要経費をも無償とすることを疑問視する声が現場では高まっている。
このような状況を踏まえ、水救会は、平成元年度から内部に委員会を設け「ボランティア海難救助における費用負担のあり方」について検討を続けてきたが、七年度には「救助活動に伴う実費は被救助者に求償する(実費求償制度の導入)」という結論に達し、八年度には、実質求償制度の導入に必要な広報、捜索救助保険制度が定着していない海洋レジャーの分野における保険制度の普及等についてさらに検討をすすめ、早ければ九年度に実施したいとしている。
2、実費求償の意義
(1)救助活動に伴う経済的負担を軽減することによって、ボランティア救助活動の活性化を図る。
(2)救助費用に関する海洋レジャー関係者の認識を改善し、保険制度の普及・定着を図る。
3、実資求償の対念
(1)船舶海難の場合
被救助財産の価格の範囲内で求償〔海商法(商法第四編)に基づく求償範囲〕
(2)被船舶海難の場合
範囲は限定せずに求償
4、請求方法
(1)救助活動に対する謝金として請求する。
(2)請求額は、ボランティアとしての性格を考慮し、非営利活動の範囲で決定する。
(3)燃料費等の時間当たりの使用単価を定めた標準救助料率表を作成し、請求額算定の目安として提示する。
(4)捜索・救助活動を実施した救難所等が、標準救助料率表を参考として請求額を算定し、被救助者またはその保護者に請求する。
(海上保安庁救難課)
新刊紹介
海図の役割や歴史を読み物風にまとめた
杉浦 邦朗著
「海図をつくる」

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本書は「海図をつくる」人たちの活躍を中心に、海図の役割や歴史をわかりやすく書いたもの。
著者は、海上保安庁の水路部長を務め、長年海図づくりに携わってきたその道のプロ。
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