海外研究員見聞録

スウェーデン(1)

富山商船高等専門学校 教授 山崎祐介
平成八年の文部省短期海外研究員として、スウェーデン、ドイツ、オランダ、イギリスおよびアメリカの五カ国の船員教育・訓練機関を三カ月間にわたり訪問した筆者が、その体験と見聞を綴る。
一、世界海事大学

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世界海事大学(World Maritime UNV 略称WMU)の概要を私の感じたことを交えながら紹介しよう。WMUは、日本での知名度は低いがIM0の長期・総合的政策として世界的に関心が高まりつつある。
(1)歴史的な背景
WMUはスカンジナビア半島南端のスウェーデン第三の都市マルメにある。マルメは、十二世紀の終わりに砂の土手が出来て生まれた土地と言われ、バルチィック海から北海に抜ける狭い水道の北端に位置する。対岸のデンマークの中心都市コペンハーゲンヘはジェットホイルで四十五分で行ける。
マルメには緑の森と青い海、七キロメートルの砂浜があり、人口約二四万の商業中心のスウェーデンの玄関都市である。スウェーデン首相もここに住んでいるという。
スウェーデンは、バイキングで有名な隣国ノルウェーとともに海運先進国であるが、かつて七校あった海事教育機関は、海運のトランスナショナル化とともに現在では三校に減っている。
チャルマー工科大学の一学部、カルマー大学の一学部およびWMUである。WMUはスウェーデンにあるがスウェーデンの海事大学ではない。その意味では七校が二校に圧縮されたことになる。
以前、マルメにMalmo Maritime Academyがあり、このAcademyが廃校となり、その後に、IMOの「安全な航海ときれいな海」のスローガンのもとに、とくに発展途上国に優秀な人的資源を供給するため、一九八三年IM0によってWMUが設立された。
(2)学科
正学科で入学定員百人、修業年限二年で、卒業すれば修士号が付与される。昨年から特に優秀と認められ、豊富な経験を有し、英語力も十分ある者に対しては、一年で卒業できる制度ができた。
学科はつぎのとおりである。
@GMAEP(General Maritime Administration and Enviroment Protection)
運輪行政・環境保護に関する学科
AMET(Maritime Education and Training)
海事教育教官育成学科に航海コースと機関コース
BMSA(Maritime Safety Administration)
海上保安・船舶検査業務学科に航海コースと機関コース
CPM(Port Management)
港湾行政・管理・港湾海上交通管制学科に技術コースと商業コース
(3)入学資格、学資
入学したい学科に対応した大学をすでに卒業し、英語力のあるもの(例えば、TOEFLで五五〇以上)には、入学試験はなく、書類選考と面接試験だけである。
入学者の中には、世界の一流大学を卒業した者やすでに修士号を持っている者もいる。
学資は、年間約二百万円(教材費、寮費、食費等を含む)で、日

 

 

 

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