環境への影響
元東京大学教授
徳田拡士
マスコミが大騒ぎをしていますが、今回はC重油ですから毒性は比較的弱いのです。C重油は、一番重い重油ですから沖から流れてくる間に、生物に害になる成分はさらに少なくなっているのです。
海岸のじゃばじゃば入って行けるような浅いところでは、岩のり、うに、さざえなどに被害が出ますが、全滅することはありませんし、沖合のずわいがになどは全く平気なはずです。
それよりこわいのは、風評被害です。越前がにの価格が三分の一になったとかいうのも風評被害以外の何ものでもないのです。
生態系への影響がいわれていますが、漁業被害と生態系への影響とは別個に考えるべきです。
漁業は、海がきれいになって油臭くなくなれば、操業ができますし、漁業への影響がなくなった終息宣言を出せます。今までのC重油での例からみますと、ほぼ半年後には終息宣言が見込まれます。
海には、水産業に利用しないいろいろな生物がいますが、これら生物を含めた生態系への影響は、日本では今まで詳しく調べたことがないので何ともいえません。とにかく出来るだけ早く汚染した海岸をきれいにすることです。
損害補償問題
石油海事協会
事務局長 杉浦清司
今回の事故については、国内法として油濁損害賠償法があって、日本は国際条約に基づいた補償体制となるのですが、当初ナホトカ号は、五億ドルの保険に入っているとか伝えられ、ロシア側で十分な補償がとれるということが出てしまいました。その五億ドルと国際条約での補償体制の中で、船主が払うべき金額というのは、余りにも乖離が大きいのと、マスコミの中途半端な報道によって大変な混乱が起きているようです。
そもそも被害が定まらない段階で補償金額の多寡がメインになってしまっていることが大きな問題点の一つです。
タンカーの油濁については、船の保険がどうであれ、基本的には国際基金条約と油濁民事責任条約がパッケージになった補償体制があるということを認識しておくべきでしょう。
船の責任を追求するのは、補償体制とは別の次元で論ずるべきでしよう。
いずれ足りるとか足りないとかの話になってくるでしょうが、日本においては、一事故当たりの総枠としては約二三〇億円の補償枠が制度としてあるということです。

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