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制定された。法改正により、知的障害者に加えて日常生活になんらかの援助を必要とする重度あるいは重複障害者も対象となる。新法は、65歳以下のこれらの障害者を対象とするところから、機能障害をもつ成人のほか児童・青少年も包括するものであり、必要であればパースナル・アシスタンス(個人的な援助)を受ける権利を有する。また、障害児に対する親の養育労働は普通児のそれとは比較できないほど重いのが普通であり、したがって障害児が家族との生活を普通に営むにあたって必要であれば、パーソナル・アシスタンスが適用される(Socialstyrelsen,1994)。
障害児の保育に関していえば、社会サービス法第16条(1982:620)により、身体的、精神的あるいはその他の理由により特別な援助を必要とする子どもに対しては、就学前児童の保育ならびに学童保育が優先されるものである。優先の背景をなす考えは、統合保育による障害児の生活のノーマライゼーションであり、そのためにはまた、社会サービス法による福祉サービスと県の医療専門職員によって提供されるリハビリテーションとの密接な連携を必要とするところにある。

 

4.5 まとめ−一個人のライフサイクルからみた社会政策

社会政策の全容を理解するにあたって普通とられる方法は、疾病、高齢、障害などによる生活困難に対する所得保障や援助・サービスなどのプログラムを記述することである。一人の人間のライフサイクルによってみることも、社会問題の構造的要因を把握するには不十分であるが、個人的レベルにおける社会政策の構造を理解するうえでは分かりやすい方法である(Nygren,1994)。また、所得や手当金が年齢によってどのように再分配されるかも、理解しやすい。

 

出産前:
スウェーデンの社会政策は、子どもを産むか産まないかの選択から始まる。望まれない妊娠に対する対策として実施されたのが1974年中絶法の制定であった。また、避妊具や中絶相談も無料で提供される。反対に、妊婦に対する社会政策的な対応としては、妊婦の健康管理や妊娠中の病気に対する治療があげられる。また、妊婦が肉体的な重労働に従事し、配置転換が不可能な場合は、先の項で述べたように妊婦手当金の所得比例給付が適用される。

 

誕生から大人になるまで:
出産費用は無料に近いものであり、新生児は誕生とともに小児保健センターに登録され、就学するまで予防接種、健診をはじめとする一連の小児保健サービスを無料で受けるものである。歯の予防や治療は20歳に達するまで無料であり、入院費も16歳まで税金還元により無料である。
子どもの誕生以前に最低180日間社会保険局に登録されていれば、(両)親保険が適

 

 

 

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